01. 伯爵令嬢は婚約破棄されそうになる

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 それに引き換え私ったらいつもどおり仲直りして2人で魔術の練習をすると思ってたから、普段着のドレスなんか着てきちゃって……  エドワード様が言ったことが正論だけに何も言い返すことができないけど、素直に謝る言葉も出てこない。握りしめたハンカチはもうクシャクシャになってしまった。  そんな子供な自分が嫌でなにか言いたいけど、唇がくっついたかのように乾いて言葉にならない。奥歯を噛み締めてこみ上げてくるものを抑えようとしてるけど、胸の奥が熱くなってきてよけいに苦しい。  一秒でも早くここから立ち去りたい。とりあえずお父様に相談することを伝えて帰った方が良いわ。  エドワード様から今日は帰るよう促してくれないかしら。そうしたら頷くだけでいいのに。  そんな私の気持ちが届くわけもなく、エドワード様はソフィア様に特上の笑顔を向けて話し続ける。 「本当にソフィーは思いやりがあって努力家で、理想の女性だね」  ああ、もうダメみたい。  気づいたら私はボロボロと大粒の涙をこぼしていた。 「サラ!?」  エドワード様の少し焦った様な大声にハッとした私は、2人に挨拶もせずに立ち上がり王門に向かって走り出していた。    こんなドレス姿で泣きながら走って、本当に私は淑女失格だわ。周りが驚いて見ているけど、気に留めることなく走り続ける。 「サラ! 違うんだ! 待って! 行かないで!」  エドワード様がこちらに向かって叫びながら追いかけてくるけど、今はどうしても話したくなくて王家の魔力結界を出た瞬間に私は自分の部屋まで転移した。
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