番外編 幸せを運ぶ音

2/3
144人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
 サラが部屋にかけた結界を力づくで破り扉を開けると、サラは眠っているように死んでいた。僕はその光景が信じられなくてサラの体をゆするけど、奇跡は起こらない。まだこんなに君の体は温かいのに……  ああ、またこの夢か。もううんざりだ。いつの間にか眠っていたらしく窓の外には綺麗な星が見えた。顔を手で覆うが指の隙間からは一筋の涙がこぼれ落ちる。  なぜ僕はあの時サラにひどい事を言ったのだろう。なぜ君に追いつけなかったのだろう。追いついて君にぜんぶ謝れたらいいのに。すべてが後悔だらけで君の笑顔さえもう思い出せない。 「あと1回だ……次が最後のチャンスなんだ……」  もう魔力を貯める力も弱っている。魔力の巡りも悪く薬は飲んでいるがあと1回が限度だろう。正直サラを呼び戻すことができても、僕の命はすぐにつきる。それでも君にもう一度謝れるなら、何も後悔はない。  サラ……君に逢いたい。 「……ド、エド!」  なんだろう? サラの声が聞こえる。また夢を見ているのか? でもまたこの夢から覚めたら1人で…… 「エドったら!」  あまりにも近くで聞こえてくる声に、ぱちりと瞼を開ける。目の前にはサラがいた。あれ? なんだか大人っぽいな。15歳には見えない。 「どうしたの? すごいうなされてたよ。寝汗もすごい」 「……え? サラ?」 「サラだけど? どうしたの?」  そこでようやくここが現実で僕たちは生まれ変わって夫婦になっているのを思い出す。今は夜中で2人でベッドに寝ていた。 「夢を……見てたんだ」 「うん? 嫌な夢?」 「あの時の部屋で、サラを呼び戻せなくて、それでサラが死んでる夢も見て……」
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!