いつも車で移動していた

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「二人で片付けて下さい」 妻は、正座している私と息子に対してそう言った。 目がつり上がり、眉間にシワをよせている彼女の顔は、身体が震えるほど怖かった。 鬼の形相といったところだ。 妻が鬼の形相になった理由……。 それは、私と息子が喧嘩をしたからだ。 リビングに物が散乱し、壁に穴が開いた。 「いい加減にしろ」 妻が怒鳴った。 今まで聞いたことのない声に、私と息子はフリーズする。 「そこに座れ」 私と息子は、共に正座していた。 「部屋が滅茶苦茶だろ。いつも誰が掃除してると思ってんだ」 この言葉を皮切りに、妻の説教が始まった。 内容は覚えていない。 覚えているのは、鬼の形相と思えた妻の顔だった。
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