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俺の出番は早々にあった。見よう見まねでポーズをキメながら、舞台上で幼い俺を探した。
いた。
俺は無邪気な笑顔を浮かべ、楽しそうにグイグイグインジャーを応援していた。
全然楽しそうだ。
トラウマが生まれそうな気配はこれっぽっちもなかった。
どういうことだ。
何事もなくヒーローショーが進むにつれ、俺は焦った。
どうしてなにも起きない。いや起きているのか。幼い俺に忍び寄る不穏な空気を感じとるには、舞台と客席は離れすぎていた。
業を煮やした俺は舞台から客席へ飛び降りた。
天使のような笑顔を浮かべ楽しそうな幼い俺。
そんな俺にトラウマを植えつけさせるものは一体なんだ。
俺は客席をかき分けながら、ズンズンと幼い俺に向かって進んでいった。
すると、幼い俺の顔は天使の笑顔から、怯えたものに変わっていくではないか。
そしてとうとう泣き出してしまった。
おおどうした! 俺が気づかないうちにトラウマを植えつけられてしまったのか!
ショーを中断して、客席をかき分け進む俺を、ショーの関係者が駆けつけてきて止めようとした。
俺は静止を振り払って、関係者をなぎ倒しながら客席を進んだ。
何人の関係者が来ても俺を止められなかった。
幼い俺を泣かせるヤツがすぐそこにいる! 俺は怒りのパワーで突き進んでいた。
幼い俺はゲボを吐くぐらい号泣しだした。
そして断末魔のように叫んだ。
「グ、グイグイグリーンが、グイグイ来るよ! グイグイ来るよ〜!」
おわり
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