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「かっ、かわいい!!」
リンナの気持ちが昂ったのか、ギューギューと抱きしめられていると遅れてきたミストが急いでリンナを引き剥がす。
不機嫌になったリンナに引っ掻かれながらもミストは平然と声を掛ける。
「そうだ、ティアラ!」
「……?」
「そろそろ城に護衛に行くだろう?」
「はい」
「頼みたい事があるんだ」
「着替えが……」
「着替えは後で届けるよ、だから頼みたい事があるんだ」
「でも少し時間が……」
「そうだね、いつもより時間は早いけど頼みたい事があるんだ」
笑顔の中に含まれている圧力を感じ取り、大人しくミストに問いかける。
正直、あまり良い予感はしない。
「なに?」
「ここの教室にある荷物と共に城に向かってくれ」
「……荷物?」
「とても大切な荷物だから気をつけて運んでね。一応は仕事だから」
「分かった」
馬車で運べばいいのにと思っていたが、仕事と聞けば致し方ない。
頷くしかなかった。
それに、こうなったミストに反論しても良い事はない。
顔周りのキラキラがいつもと違って真っ黒である。
そういう部分がミストの御側付きであるリンナと似ている。
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