348人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
護衛の為に城に向かうと一番見晴らしのいい屋根の上。
お気に入りの場所には、必ず一輪の花が置いてある。
初めは誰かの落とし物かと思っていたが、どうやら自分の為に置かれているような気がしていた。
昼に出歩くことのなかった自分にとって、花は無縁のものだった。
しかし誰がプレゼントしてくれているのか、ずっと気にはなっていたのだ。
ふと、その事を思い出してブラッドに聞いてみることにした。
「いつも屋根の上にお花が置いてあるんです」
「……え?」
「誰か、お祖父様に頼まれたのだと思うのですが……」
「ぁ……」
「……?ブラッド殿下は何か知っていますか」
城に住んでいるブラッドならば、花を用意している人を知っているのかもしれないと思ったのだ。
問いかけるとブラッドは恥ずかしそうに小さく手を上げた。
「……それは俺が」
「!!」
「君に……その」
ブラッドは恥ずかしいのか気不味いのか、此方から視線を逸らしている。
それには流石に驚いていた。
昔から毎日欠かさず置かれている花は、まさかのブラッドからの贈り物だったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!