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ブラッドも少しでも強くなれるようにと剣や格闘術を習ってはいるが、今のように複数で襲撃を受けてしまえば太刀打ち出来ないだろう。
だからこそフルムーン家の力はとても大きい。
フルムーン家の馬車に乗り込んだ。
うつらうつらしているティアラは力が抜けたまま此方に寄り掛かる。
肌と肌が触れている部分がとても熱いような気がした。
そんなティアラ小さな声で呟いた。
「ありがとう……」
そんな時、いつもと違う感触に気付いて、ゆっくりと首を動かして目を開く。
「あれ……で、んか?」
「ティアラ、もう少しで家に着くからな」
「マジェは?」
「学園に残った……俺が送りたいと申し出たんだ」
「んー……」
(やはり俺では……)
ティアラの世話に慣れたマジェストに任せるべきだったかもしれないと、自分の行動を後悔していると、ティアラはギュッと服にしがみつく。
どうしようかと戸惑って名を呼んだ。
「ティアラ……?」
「…………で、よ」
「えっ……?」
小さな声を聞き逃さないようにと耳元を顔に近づける。
ティアラは優しく微笑みながら、ぽつりぽつりと呟いた。
「……無事、で良かった」
「っ!?」
「ブラッ、ド……殿下?」
ティアラが自分の心配をしてくれる。
側に居てくれる。
名前を呼んでくれる。
その全てが嬉しくて愛おしくて仕方ないのだ。
ガタガタ揺れる馬車の中で、強く強くティアラを抱きしめた。
「ありがとう……ティアラ」
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