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あの後、数日間眠り続けているティアラが目を覚さない事を告げられたブラッドは血相を変えてフルムーン家に向かった。
そしてラーナと共に、眠り続けるティアラの部屋へと駆け込んでから目を見開いた。
「ティアラ……!?」
ティアラのベッドには沢山の花が飾られている。
そしていつもはヘラヘラしているミストやツンとしているリンナですら悲しげに瞼を伏せている。
マジェストは顔を背けていた。
セスは両手で顔を覆い、シシナードは壁に手を付いてプルプルと震えていた。
「一体……なにが」
「…………」
「……っ」
「ッ、ティアラに何があったんですか!?」
悲痛な声が響く。
暫くの沈黙の後、ミストが静かに口を開いた。
「眠り続けてるんだ……ずっと」
「どうすれば、ティアラは目覚めるんだ?」
「愛する者のキス……さえあれば」
「王子様のキス、それしかあるまい……!」
シシナードもブラッドに背を向けて食い気味に答えた。
そんな御伽噺のような話が本当にあるのか、と。
しかし迷いを振り払うように強く頷いた。
眠り続けているティアラの側に向かい顔を覗き込む。
ティアラをじっとと見つめた後「ティアラ……」と小さく呟いてから、そっと小さな唇に口付けた。
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