第一章

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「一般的には無い、と判断される」  ダニエルの表情は硬い。 「ですよね」  兄の言葉にエレオノーラは顔を緩めて、ほっと息を吐く。 「だが、相手が悪い」 「どういう意味ですか?」  彼女は再び身を乗り出した。 「相手があのリガウン団長だ、ということだ。ということで、有るものと判断する」 (ダンお兄さまのおっしゃっている意味がよくわからないわ……)  エレオノーラは首を傾げる。 「ちょっとダンお兄さま。なぜ相手によって判断結果がかわるのです。無いというのであれば無いでよろしいではありませんか。責任を取る必要は無い、と。ダンお兄さまがリガウン団長に伝えてくれればよろしいのですよ」  エレオノーラの言葉に、ダニエルは「うーん」と眉根を寄せて唸っている。 「リガウン団長が堅物でクソが付くほどの真面目人間だからだ。仮に、その相手が第一のサニエラ副団長だったとしたら、問題はなかった」  団長がクソ真面目であれば、そのサニエラ副団長は反対の不真面目というやつのように聞こえるのだが、間違いはないのだろうか。 「ええと、つまり、今回は相手がリガウン団長だったから、と。それが理由であるとおっしゃるのですか?」 「そういうことだ」 (えぇっ? それって理由になるの?)  エレオノーラは考える。彼はそんな偶然の事故でエレオノーラを妻に娶りたいと言い出しているのだ。そんな理由で生涯の相手を決めてよいのだろうか。いや、本人がよければいいのかもしれない。そもそも彼は本当にエレオノーラを妻として望んでいるのだろうか。  考えれば考えるほど、わけがわからない。そもそも彼が『妻に娶りたい』と言い出したこともわけがわからない。 「ええと。リガウン団長は、私で本当に良いのでしょうかね?」  エレオノーラは尋ねた。そもそも、一番の問題はそこだ。  だが兄から返ってきた言葉はもちろん「わからん」だった。 「そもそも、あの状況でリガウン団長と出会ったということは、リガウン団長はレオンという男性店員の顔は見たが、エレンの素顔を知らない、ということだ」  ダニエルが難しい顔をしていた。 「あ、言われてみればそうですね。ということは、リガウン団長が私の素顔を見てがっかりするパターンもあるというわけですね」  エレオノーラが一人納得する。 「そうなった場合、オレ達が許さない」  少々不穏な言葉が聞こえたような気もする。三人の兄と父親は末っ子のエレオノーラのことをいろんな意味で溺愛している。彼らの言葉は、ときどきエレオノーラをけなすように聞こえるときもあるが、それでもその言葉には溺愛が込められている。
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