第二章

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 そもそも、参加したくてもさせてもらえないのだ。それを『していない』と表現されるのはいささか語弊があるというもの。 「その辺の細かいところはどうでもよろしい。とにかく、エレオノーラもすでに十八。本来であれば婚約者がいてもおかしくはない年頃。むしろ結婚していてもおかしくはありません」  母親の力説に、男性陣は四人とも腕を組み、うむぅと唸ることしかできない。ここにも結婚していない男が三人いるのだが、それには触れないらしい。とにかく、婚約者がいるということで大目に見ているのだろう。さらに、第零騎士団所属という特殊任務部隊。そうやすやすと結婚もできる部隊でもない。 「我が第零騎士団も第一騎士団と任務はこなすことはあるからな。エレンのことを知っていてもらっても悪くはないかもしれないな」  ダニエルが言った。 「ですが、リガウン団長は、責任を取るとおっしゃったのですよね?」  エレオノーラが顎に手を当て、何かを考えているようだ。 「そうだが?」  ダニエルは語尾をあげ、右の眉尻もピクリとあげた。 「つまり、リガウン団長は別に私のことを好きでもなんとでも思っているわけではなく、あの事故の責任を取りたいとおっしゃっているわけですよね?」  エレオノーラの視線は何かを探すかのように斜め上の空中を見つめている。 「ということは、私はリガウン団長の妻、まだ結婚はしていないので、つまり婚約者、いや、まだ届け出もだしていないから恋人? を演じればよろしいということですよね?」  そんなエレオノーラの発想に、他の五人は唸っている。  エレオノーラとしては『ジルベルトの恋人』という仮面をつけて、その役を演じればいいのだろうと思っていた。  次の日。リガウン侯爵家の使いという者がやって来た。要約すると、ジルベルトが次の休暇にエレオノーラに会いたいのだが、都合はどうかという内容である。それを断る理由は無いため、もちろんフランシア子爵家の出した答えは『快諾』である。 「フレッドお兄さま」  仕事から戻ってきた三番目の兄を見つけたエレオノーラが声をかけてきた。 「リガウン団長は、どのような女性が好みかわかりますか?」  彼女の突拍子もない質問に、アルフレドの眼鏡がずれた。慌てて、左手の人差し指で押し上げる。 「エレン、何かあったのか?」  アルフレドもエレオノーラのことが心配になり、ついその顔を覗き込むようにして見下ろした。 「いえ。ほら、リガウン団長とお会いするので、せっかくならば団長のお好みの女性を演じようかと思ったのですが。情報部のフレッドお兄さまであれば、その辺の情報を持ち合わせているかと思いまして」 「うーん」  そこでアルフレドは腕を組んだ。  情報部らしく、『脳内データベースを検索中、検索中、検索中……。お探しのキーワードに一致する結果は見つかりませんでした』 「知らない」 「えぇ~。どうしましょう?」  エレオノーラの困ったような調子の外れた声が響く。 「騎士団のそういった一般的なことであれば、ドム兄に聞いてみればいいのではないか? 広報部だからな」  言いながら、アルフレドは自室へと向かっていく。その背中が震えていた。どうやら彼は、笑いをこらえているようだった。
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