第二章

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 次にエレオノーラは二番目の兄のドミニクの部屋を訪れた。 「どうかしたのかい?」  自室でお茶を飲みながら本を読んでいたドミニクは、その本から視線をあげて優しく声をかけた。  基本的に三人の兄はエレオノーラには優しい。ときどき、突拍子もない行動をとる彼女を制する必要があるだけで。  その中でもドミニクが一番穏やかな性格をしている。  ドミニクはカップを手にし、お茶を口に含んだ。 「ドムお兄さま。ドムお兄さまは、リガウン団長の好みの女性をご存知ですか?」  お茶を飲むのではなかった、と後悔に襲われたドミニクは、お茶を吹き出しそうになり、咽た。 「急にどうしたんだい? エレン」  ゴホゴホ、と咳込んでいるのは、お茶が変なところに入り込んでしまったからだ。 「せっかくリガウン団長にお会いするなら、団長の好みの女性を演じた方がよろしいのではないかと思ったのですが。嫌われるよりは好かれる努力をしたほうがいいのかなと思いまして」  口元を拭きながらドミニクは答える。 「女性との浮いた話を聞いたことが無い。残念ながら、僕はその質問に対する答えを持ち合わせていない。ここは、この話を持ってきたダン兄さんに聞くのがいいのではないかい?」 「わかりました」  しぶしぶと部屋を出ていく妹の後姿を、ドミニクは不安気に見送っていた。  そしてエレオノーラは一番上の兄であるダニエルの部屋へと向かった。 「何かあったのか?」  その声色を聞く限り、今日のダニエルは機嫌が良さそうだ。 「まあ、座りなさい」  促されるがまま、エレオノーラはソファに座る。 「それで、どうかしたのか?」 「ダンお兄さま。リガウン団長の好みの女性のタイプを教えてください」 「どうしたんだ、急に。やっとやる気が出たのか?」  ダニエルがそう口にしても、エレオノーラには伝わっていないようだ。恐らく、婚約者を演じる気はあるとか、そんな風に思っているに違いない。 「せっかくリガウン団長がいらっしゃるのですから、団長の好みの女性を演じた方が良いのではないかと思ったのですが」  ダニエルは腕を組んだ。ダニエルの予想通りの答えが返ってきた。この妹は本当にジルベルトの好みの女性に変装する気だ。できることなら、演技ではなく本気になってもらいたいのだが。というのがダニエルの想いであるのだが、残念ながらエレオノーラには届かない。  ただ、ジルベルトの気持ちがわからない以上、下手に妹にそういうことも言えない。  どっちもどっちで、よくわからない。というのがダニエルの本音である。本音だからこそ、口にすることもない。 「まあ。はっきり言って、リガウン団長の好みの女性についてだが。オレは何も知らん」 「なんで、そんな投げやりな態度なんですか」  エレオノーラはぷーっと頬を膨らませた。 「そんな顔をしても、知らないものは知らん」 「でしたら、団長から聞いてください」  エレオノーラはずずいと身を乗り出す。 「何?」
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