353人が本棚に入れています
本棚に追加
「第一騎士団のリガウン団長がだ」
「はい。先ほどお会いしました」
「それがだ。そのリガウン団長が、だ。君を妻に娶りたいとか言い出した。ようするに、エレオノーラと結婚したいということだろう?」
兄の言っている言葉の意味はわかるのだが、理解が追いつかない。
「は?」
と、エレオノーラが口にしたタイミングで二人の前にお茶を差し出すパメラ。
「責任を取りたい、とか言っていたぞ?」
お茶を手にしながらダニエルが言う。
「何の?」
エレオノーラのその疑問は正しい。
「それは、オレが聞きたい」
エレオノーラはカップを手にした。お茶を一口含みながら考える。責任とは、何の責任だろうか。
「リガウン団長は、確か侯爵家ですよね? それがこの子爵家の私を妻に、ですか?」
「相手の言葉を真に受けるなら、そうなるな」
「つまり、玉の輿」
「そういう、面白い発想に持っていくのはやめろ。父上にも報告できるようなネタを考えろ」
ダニエルもお茶を手にした。なんとか落ち着こうとしているのかもしれない。
「ネタも何も。リガウン団長とは先ほど任務でお会いしたので初対面です。何の責任を取ろうとしているのかが私にはまったくもって心当たりがございません」
エレオノーラの言うことはもっともである。なぜなら、ぶつかった瞬間、彼が第一騎士団の団長を務めているジルベルトという男であることを認識していなかったのだから。ぶつかった瞬間は、見知らぬ男だと思っていた。
「実は、一線を越えてしまった、とかはないだろうな?」
「お兄さま。あの状況で超えられる一線があるのであれば、是非、教えを乞いたいものです」
エレオノーラの目が怖かったので、「冗談だ」とダニエルは呟いた。
「あの任務時に、リガウン団長と何があったのか。秒単位で話せ」
と言われてしまったため、エレオノーラは記憶を掘り起こすことにしてみた。
最初のコメントを投稿しよう!