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「不死鳥なんて、存在するはずなかったな」
私は1人、墓の前に跪き花を添える。
何度ここに来たのかはとうに忘れた。
そして訪れる度、命を絶ってしまおうと思うのに。
もしかしたら。
もしかしたら、彼は本当に不死鳥だったのではないかと愚かな期待をしてしまって。
灰の中からまた、出てくるのではないかと。
「墓ごと燃やせばお前はまた生き返るのか」
「そんな、ばちあたりなことすんなよな」
独り言に、返事があった。
なんだ、と思った次の瞬間、背中に温もりがのし掛かってくる。
短い腕が首に絡まった。
しっとりと柔らかい頬が私のそれに触れる。
「な......!」
あどけない、茜色の瞳に私が映る。
「かけは、おえのかちあな」
舌ったらずの愛らしい声が、酒場の時と同じように耳をくすぐった。
おしまい
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