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翌日、海斗はビリーに呼び出された。ラノキリア本社の社長室、ビリーの有能な秘書は海斗に会うなり嫌悪感を隠さなかった。
「kai、遊ぶのは自由ですけど、相手を選ばないといつか破滅しますよ」
「えぇ!? な、なんで」
「その匂いはキツイ、どんな底辺のアルファと寝たんですか」
「うっ……」
昨日からアルファの目が厳しい。ベータの自分にそれを言われても全くわからないので、理不尽な気がしてならない。
「まぁまぁ、サラもそう言わずに。確かにキツイ香りだね。サラはもう下がっていいよ、これからkaiにはお説教だから」
「では、失礼致します」
ビリーの美人秘書のサラは、丁寧な挨拶とは裏腹に海斗にキツイ視線を送って去って行った。
「僕、これからお説教されるの? アルファと寝ろと言ったのはビリーだよぉ」
「そうじゃない。というか、そうだな。浅はかなことを言ったよ。警戒心の強いkaiが選んだ相手なら心配ないと思い込んでいた僕が間違えていたみたいだ。kai、そのアルファとは縁を切った方がいい」
「うん。みんながそんな嫌な匂いっていうなら切るよ。というか僕は仕事のために寝ているのに、その仕事を邪魔するような人とはもう付き合えないからね」
「仕事のためって……。確かに色気を出すにはそれが一番だけど、でもそれなら本当に好きな人を作れば問題ないだろ? 前から思っていたけど、どうして特定の相手を作らないんだ?」
そんなことは、誰にも言えない。
「それ、言わなきゃだめ? 今回は知識不足で迷惑かけたけど、これからは仕事に支障が出ない相手を見極めるよ」
「まぁ、言いたくないならいいけど。でもそのアルファと縁を切るにしてもひとりで会うな。その執着なら、別れを切り出したら監禁されるよ」
「こわっ」
ビリーはなんだかんだ優しい。その相手に海斗が傷つけられないかが心配で、今日はきついフェロモンに耐えて自分と会ってくれた。
海斗がそのアルファと縁を切ると決めたので、あとはビリーが対応するからと、海斗はそのまま動くなと言われた。とにかくそんなアルファは何をしでかすか危ないから、海斗が会わずに全てをビリー側で終わらせてくれるらしい。
その後、ビリーは顧問弁護士と共にビリー自らそのアルファに会い、海斗と今後関わらないという約束を結んでくれた。
そして、後日ビリーに言われたのは。
「kai、しばらくは遊びをやめなさい。これは命令。アルファと寝なければその色気を出せないというなら、もうオメガ用撮影はやらなくていい。今回はそのことで仕事に影響が出た、ラノキリアで働きたいならそれを守って」
「……はい」
そのアルファとは揉めたらしい。
そりゃ、本人ではなく専属契約先の社長が、自分のところのモデルと関わるなと言うのだから納得いかなかったのだろう。だがビリーはこの業界で影響力がとてつもなくあり、敵に回したら仕事がなくなる。そんなの誰でも知っていることなので、そんなビリーが守る海斗に手を出すことはもうないだろう。
ビリーからは、「あんな底辺に引っかかるなんてkaiは見る目がない」とまで言われた。あんなのばかりが相手なら全て切らないと仕事に出せない、今後kaiと拗れた時に、会社に乗り込むアルファが現れないこともないと言われたら、ビリーの言葉に頷くしかなかった。
類の学業の都合で撮影は二週間後になった。その時までクリーンでいることと言われた。
もともとどうでもいい相手しかいないから、切ることには全く問題ないが、問題はそこじゃない。海斗には食事と同じくらいアルファに抱かれるという行為が、必要だった。
――僕の心を壊さないために。
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