8 オメガへと

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※ 「海斗……やっと二人きりになれた」 「類、ごめんね。僕、類以外の人に襲われちゃって」 「こっちこそ守れなくてごめん。怖い思いをさせて、すまなかった。とりあえず風呂入ろう。先生は消毒したって言ったけど、俺が隅々まで洗いたい」 「うん、お願い」 この病室は、まるで高級ホテルのような特別室だった。アメニティはホテル品質、バスローブやリネンもいい手触りだった。浴槽も二人で入れるくらいの広さだ。 湯を溜めている間に、海斗は類に体を隅々まで洗われた。そこにいやらしさはなく、むしろ真剣に類は海斗の肌をひとつひとつ丁寧に余すところなく触って確かめた。 「チェックは終わった?」 「あ、ああ。相変わらず綺麗な肌だった。どこも傷がない。お尻もきゅっとして可愛かった」 「んもう!」 浴槽に二人で浸かった。やっと、落ち着くいつものポジション。類が海斗を後ろから抱きかかえ、うなじにちゅぅっと吸い付く。 「はっ、あん」 「俺のだ。海斗は俺の、俺のオメガになるんだね」 「うん、類のオメガ。嬉しい?」 「どうだろう、嬉しいといえば嬉しいかな? でも何も変わらないと言えば変わらない。海斗の性別がたとえアルファだとしても抱くし、やっぱり変わらない」 ――そうか、類にとって性別は二の次なんだ。嬉しいような。もっと喜んで欲しかったような、でも僕自身ならなんでもいいなんて、最高の口説き文句だ。 「ふふっ、類は僕のこと大好きだもんねぇ! ブレないところが本当にカッコいい。でも僕は違う、僕はやっぱり嬉しいよ。僕も類をフェロモンで誘える日が来るなんて、楽しみで仕方ない」 「フェロモンなくても、誘われていますけど?」 「それもそうだね、僕は常に類相手なら発情しちゃう」 キスをして、抱き合う。やはり、幸せしかない。 「類が欲しい」 「ああ、風呂から上がって、ベッドできちんと抱かせて」 類は海斗を抱き上げ、風呂場を後にした。ベッドに運ぶと、あっと思い出したようにドライヤーを持ってきて、ベッドの上で海斗の髪を乾かした。 海斗は類のしたいようにそのままじっとして、おとなしく類に抱かれる時間を待った。 「もういいかな。はぁ、やっと海斗を抱ける」 「はは、類の髪はまだ濡れているよ? 僕が乾かしてあげる」 「そんなことより、もう待てない‼」 「ああ、はっ、ん」 ――そんな事って、僕のことは爪の先まで水気をふき取って大事にしてくれたのに? 類の肌も髪も、まだ濡れていた。その姿もなおさらかっこいいと思う海斗だった。そして海斗自身も限界だから、濡れたままの類のキスに素直に流された。 「海斗、愛している」 「類……僕、怖かった。類以外の人に抱かれたら、もう類の前に立てないって思ったの。類は綺麗だから、そんな僕を見るのが嫌だろうなって」 「海斗。俺はどんな海斗でも好きだよ、ただ海斗を抱く男がこの先出てきたら、俺はどんな手を使ってでも制裁を加える」 「類、んあっ、すきっ、あ」 海斗の答えは必要ないみたいだし、これ以上無駄なことを言うなと言わんばかりに、海斗の男根をさすった。普段はそこまで重要視しないソコだが、類は(むさぼ)き、海斗の快楽をあっという間に引き出した。尻よりも先にまずは海斗を高みに導いた。 「あ、ああ、でるっ」 「出して」 「あああ、イクっ、類っ」 類は全てを飲み込み、休む間もなく尻に指を添わせた。 「あっ、」 「欲しい?」 「欲しい、類が、欲しい‼」 ちゅっと、そこにキスをして、ジェルをまとった指を中に入れてきた。 「さすが病院品質、清い感じがする。匂いも何もない、本来のただ濡らすための目的なのがいいね。余計な感じがなくて、海斗のお尻がすぐ濡れる」 「ああ、あ、んん」 「痛くない?」 「痛くないっ、類が触ると気持ちいいしかない‼」 ずちゅっ、ぶちゅっ、と海斗の下から、卑猥な音がする。指が良いところをかすった時、病院なのにそこはたちまちいつもの愛を語りあう空間になった。 「ああ、またっ、きちゃう」 「何度でも果てて、先生も出し切った方がいいって言っていたよ。出し切って、俺ので満たすから」 「るいっ、すきっ、早くっ、類で満たして?」 「くっ、もう大丈夫かな、 ()れるよ」 「あ、ああ、あぅ、はっ、」 類が 挿入(はい)ってくると、海斗の細胞がより活動しだす。全身で、嬉しいという感情が湧き出てくる。海斗がオメガになりつつあるからなのか、それとも類が好きすぎるからか、彼が(つがい)だからなのか、きっとその全てを海斗の体も心も感じているのだろう。 気持ちいい、ひたすら気持ちいい、爽から襲われた時はあんなに怖いと思った行為、相手が類だとたちまち尊いものとなる。 「あっ、あっ、気持ちいっ、類は、類は僕の中で気持ちよくなっている?」 「ああ、最高に気持ちいい、もう出していい?」 「出して、僕の中にたくさん、類を頂戴」 「くっ、はああっ、海斗っ‼」 「あああ」 海斗のお腹は激しく熱くなる。そして達してお互いのお腹は海斗の白濁が飛び散る。凄く気持ちが良くて、海斗はこれ以上ないくらいに満足だった。 それから翌朝まで、ずっと行為は続いた。 ――類がどんどん上書きされていく、僕の全てが類だけになっていく、満足感で満たされていく。 二人は夢中でお互いを求め続けた。そして気づいたら昼で、病室のドアのノックの音に類は慌てたくらいだった。
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