おまけ☆発情期はステキなヴィラで

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おまけ☆発情期はステキなヴィラで

結婚して何度も愛しあった。すると海斗の発情するタイミングがなんとなくわかってきた。類が数か月に一度、激しく興奮する。岩峰の診察の結果、実はその時こそが海斗のオメガの発情期と言われる日だったのだ。 今日は、岩峰総合病院に来ていた。 「海斗君、こないだ(そら)くんの担当医から聞いたけど元気みたいだね。病棟の看護師たちなんてメロメロだったよ。ラノキリアモデルカイの子供なら将来はモデルかなって言っていたよ」 空は退院できたが、普通の赤ちゃんより発育が遅いのでいまだ定期的に病院へ通っている。海斗も今のところ精力的に仕事はせずに子育てに専念していた。 「先生まで。最近夫の父親がまだハイハイしている子供に、宝石のCM撮影に参加させるとか言い出したんですよ、赤ちゃんに宝石なんてね。あの子は誰からも愛されているから、親としては嬉しいんですけどね! これも岩峰先生のお陰です」 「そんなことないよ、君たち家族の絆だよ! 陸斗君も順調だね、君たちが元気で過ごしているのを見るのは医者として達成感に繋がるからね! こちらこそありがとう」 岩峰は相変わらず柔らかくて優しい人だ、笑顔が安心すると会うたびに思う海斗だった。 本当の意味での海斗の正式な発情期はすでに予想が出来ていた。その日は空を両親に預ける。流石に一週間陸斗のいる家に空を預けるのは大丈夫かなと心配になり、担当医師である岩峰に相談しに来ていた。 そしたらなんと陸斗の発情期も、海斗の予定日と同じくらいだと言われた。 「驚いたよ。兄弟揃って、記念すべき日が同じだなんて。発情周期がこれから同じになるかもしれないね、本当に仲がいい‼」 岩峰は笑っていた。空を実家に預ける日に、陸斗もここの特別室に入るから、そういう心配ならいらないと言われた。明とついに初めてを迎えるようだった。 ――なんだか心配で僕の発情期どころじゃない気もするけど。 「大丈夫だよ、もしかしたら発情期で記憶に何かがあるにしても、ここは専門病棟だからね、でもあの彼なら大丈夫な気がするし、なにより二人は心が繋がっている。ただ欲望を満たすだけの行為じゃないはず」 「そうですね。明なら、大丈夫かな」 ああ見えて明はしっかりしている。陸斗の記憶を失くしたことにより精神年齢は年下だが、実年齢は明より上というのが不思議なくらい、陸斗は見た目も幼い。そういった意味でも明の方が頼りになる年上のような存在だと海斗は思っていた。 「海斗君だって、オメガとして初めて開花するんだよ? まぁ類君が相手なら問題ないだろうけど、何かあったら遠慮なく連絡してね、ってあの噂のヴィラに行くんだっけ? よく予約取れたね。僕は発情期棟じゃない通常ヴィラに行ったことあるけど、あそこは贅沢の極みだったな」 そう、それは富裕層にはとても有名なヴィラ。 そこを利用したことがある岩峰も、きっとそういう人なんだと海斗は思った。奥さんとでも行ったのだろうか。発情期棟は文字通り、発情期にだけ泊まることが許された空間、通常のヴィラの他に、そこを作った人に(つがい)ができたことで急遽(きゅうきょ)(ひらめ)いて、発情期専用ヴィラの建設もしたら、そこが飛ぶように人気になったのだった。 ――ふふ、司の正樹への本気度が誰にでもわかっちゃうよね。 「先生も知っています? 僕がアルファに襲われた時、ここに運んできてくれた人、あの彼は西条グループの御曹司で、彼が(つがい)と過ごすために手掛けた発情期専用のヴィラなんです。彼は夫の友達なので特別枠で招待してくれて、万が一のことがあっても医者もいるから安心だって言っていましたよ」 「それは、凄いな。初めてのヒート楽しんでおいで」 そんな話をして、その日の診察は終わった。 司が正樹と過ごすために考えた発情期専用ヴィラ、本当にアルファの執着はすごいと思った。類が海斗を愛しすぎてオメガにしてしまうくらいだから、なんとなく司の執着が可愛いくらいに思ってしまうが、いやあれはアルファの執着というより、正樹への本気? あれを高校一年生の時に考えてオープンまでするなんてやはりさすが優秀なアルファだ。今では人気があって、予約が取れない幻のホテルと言われている。そんな素敵な場所を海斗の初めての発情期のために押さえてくれた。 ――司には頭が上がらないな。 そしてついにその日が来た。二人の初めての本格的な発情期であり、一週間のお泊りだ。この日のために類は仕事を精力的に片づけてくれた。空もじじばばに預け、海斗はその前に陸斗を病院に送って行った。 「お兄ちゃん、送ってくれてありがとう。もうすぐ明君も来ると思うから、もう大丈夫だよ」 「うん、でもお兄ちゃんとして明にキチンと弟を託さないと」 「そんなの‼ 恥ずかしいよ、お兄ちゃんも類君と発情期過ごすんでしょ? ねぇ、発情期ってどんな感じ?」 「えっ、」 「お兄ちゃんはもう何度も類君と経験しているんでしょ、僕覚えてないから。その……そういうことするのも、発情期にどうなるのかも……」 ――そうだよね、不安だよね。 特に陸斗はまだ精神年齢中学生なら、性に興味津々でいろいろと聞きたい年ごろだ。でも海斗も発情期が初めてだった。空までいて発情期が初めてなんて言えるわけがない。空を自分の子供にするために、陸斗を騙している。海斗が回答に困っていると、そこに岩峰が来た。 「陸斗君、興味があることはいいことだけど、性体験なんて人それぞれ違うし、ヒートもみんな個性があって違うものなんだよ」 「先生‼ でも気になるんだもん‼」 「はは、君くらいの年ごろの子はそうだよね。でも大丈夫、何も知らずに初めてを彼に託してごらん、ほら入って」 そこに照れくさそうにした明が来た。 「よぅ、陸斗」 「明君‼」 ――ふふ、なんだか初々しい二人だな、可愛い。 「明、くれぐれも陸斗に無理をさせないでよね」 「わかっています。陸斗のことは俺に任せて海斗さんも櫻井と、西条のホテル楽しんできてよね」 「うん、ありがとう」 そんな感じで、もじもじしている二人を残し、ラノキリアジャパンに行って類と合流してから二人でM&Tヴィラという正樹と司二人の頭文字から名付けたふざけたネーミングの高級リゾートに到着した。 「うわっ、さすがだね。凄いっ、広いし、素敵だ」 「あぁ、ネットで見ただけだったけど、これは凄い」 入ってすぐに開放的な空間にキッチン、テーブルやソファなど大型家具が配置してあった。まずソファに座るとそこに目についた見覚えのあるものを見る。 「あ、類、これ。僕たちがまだイギリスにいた頃、正樹が送ってくれたチョコレートだよ。はは、お洒落だね、ウェルカムチョコだったんだ。二人の名前のロゴ入りチョコって笑っちゃったけど、二人のこと知らなければただのお洒落チョコだよね」 「ああそれか。西条の本気しか感じられないよ、このヴィラ。二人でしか宿泊できないのにさ、この部屋数必要? あいつらどれだけはっちゃけたんだろね」 そう、ここは(つがい)である二人しか泊まれない施設。間違っても乱交騒ぎができないように、このエリアに入るには何度もセキュリティーをクリアして、身分も証明しなければ施設内に入ることはできない。オメガの無防備を守るアルファの本気を伺える。 「司って、ああ見えて本当は真面目だよね。正樹はいつもなんだかんだ照れているけど幸せが溢れているもんね」 「俺も妻を大事にする夫だよ? もういい加減他の男の話は無粋じゃない?」 「ふふ、そうだったね。ごめん、類大好きだよ」 二人は今さら激しく燃え上がらなくても、いつも通り穏やかに始まる。予定日だとは言ってもいきなり来るわけではないので、二人はこのヴィラでゆっくりし、散歩したり、一緒に料理をしたり、楽しく過ごした。そしてその日は来た。海斗の心臓が「ドクン」と音がするくらいに高鳴って、そのままヒートに。 オメガのヒートは個人差があると言われるが、海斗のは酷かったらしい。全く覚えていないのに、三日位経った時、急に覚めた。そして部屋の状態と自身の体にある執着の跡を見て、海斗は戸惑った。目が覚めると、類の目が見たことがないくらい雄の目をしていた。アルファの本気とは、こんな顔なんだと思いながら、海斗の意識のある交わりが始まった。凄かったとしか言いようがない。類も途中で我に返ったが、二人して笑った。 海斗の三日間の痴態を類は説明してくれたが、本当にそれは自分なのだろうかというくらい、初めての行動ばかりしたみたいだった。類は本気で何もできない状態のオメガになった海斗を、どうしようもない位愛おしくなって、感動して泣いたと言っていた。 ――そうか、たまには何もせず、ひたすら類が僕のお世話をするという状態作ってあげよう。それがアルファを満たす行為なんだね。 「俺、知らなかったよ。アルファの本能はすでに海斗を愛して満たされていると思っていたけど、オメガを前にするとあんなになるなんて。ありがとう、海斗。俺はもちろん海斗ならなんでもいいけど、人生で(つがい)を愛する時間も経験させてくれて」 「ふふ、なんだか照れくさいけど、僕もありがとう。類のお陰でオメガになれたし、類に(つがい)のいるアルファを経験させてあげられて凄く嬉しい。これからの人生、発情期も楽しもうね!」 「うん、愛してるよ海斗。普段の大人な海斗も、ヒートで子供みたいになる海斗も、空のお母さんを必死にしている海斗も、全て好き」 「僕も、全ての類をひっくるめて愛している」  ~発情期はステキなヴィラで fin ~
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