こんなヒーロー小説が読みたいんじゃよメモ

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ヒロアカのようにミュータントの人口が多くなった世界。 能力を持たない主人公・東興夜は廃ビルの屋上で一人町を見下ろしていた。そこに一人の少女が現れる。彼女の名前は伊弉冉ひつぎ。金色の髪と青い瞳をもつ少女である。ひつぎは興夜に驚いていたが、逃げるのでは無く、立ち去るわけでもなく、ただ黙って興夜の側に近づき、その隣に座った。 「死ぬの?」 ひつぎが静かな声で尋ねる。興夜は首を横に振ると、「ここで町を見下ろすのが趣味なんだ」と答える。ひつぎは「そう」と返した。 「君はどうしてここに?」 「私は、自分が何をしたいのか分からなくてここにいる」 「そっか」 それから二人は太陽が落ちるまで、ぽつりぽつりと語り合った。陽が落ちて辺りが暗くなった頃に二人は共に廃ビルから降り、それぞれの家路についた。 次の日も、その次の日も、興夜は廃ビルの上に上り、後からひつぎが来て興夜の隣に座り、陽が落ちるまで語り合う。そんな日々が一ヶ月も続いた。 一ヶ月一週間目のこと。いつの間にかひつぎが来るのを楽しみにしている興夜。屋上のドアが開いたので振り返ると、そこに立っていたのはひつぎではなく、返り血に染まったヒーローだった。 「あの女の子なら此処にはこないよ。さっきばったり出くわした時に返した」 フードを脱ぎながら言うのは、「リッパー」と呼ばれるヒーロー組織に属していないフリーのヒーローだった。 リッパーは興夜の隣に腰掛けると、「なあ、なんで此処にくるんだ? ここはもうすぐ取り壊されるのに」と尋ねる。興夜は青空を見上げると、「ヒーローになりたいんだ。でも僕には何の能力もない。だからヒーローになれないいじめられっ子のままなんだ」と話す。 「ああ、夢を見るのは確かにいいな。別にヒーローになんかならなくたって、誰かひとりの正義の味方になれればいいだろ」 それが一番難しいことだ、とリッパーは語る。夢を否定せず、受け止め、アドバイスをくれたリッパーにいくらか心が救われる興夜。 「それで、これからどうするつもり?」 「とりあえず、自分が行きたい高校に行くことを目指すよ」 「それは懸命だな」 よいしょ、とリッパーは立ち上がり、「それじゃあもう二度とここに来るなよ」と警告して立ち去る。 興夜はそれを見送って、スマホを取り出すと一週間前に交換したばかりのひつぎの電話番号に発信する。 リッパーと出会った一週間後。ひつぎと共に博物館デートをする興夜。そこにヴィランが現れる。展示物のケースを破壊し次々展示物を盗むヴィラン。その時、ガラスの破片が体に当たりひつぎが怪我をしてしまう。血を流すひつぎを見て理性が切れる興夜。すると体に緑色の稲妻のようなものが走る。興夜は想像した。自分が剣を持ってヴィランを倒すところを。ひつぎを抱き締める手を離し、彼女を庇うように立ち塞がる興夜。その両手に緑色の稲妻が集中する。絵本の中で見た八岐大蛇伝説に出てくる剣をイメージする興夜。すると、手の中に大剣が現れる。迫り来るヴィラン。興夜は咆哮を上げて重い剣を両手で振るった。興夜が剣を振るうと、ヴィランは再生ができずに斬りふせられる。勝敗は呆気なくついた。興夜が呆然とするひつぎに駆け寄り、「大丈夫?」と手を差し伸べる。その手をとるひつぎ。 「助けてくれてありがとう」 「どういたしまして」 すると、駆けつけた警備員と警察に取り囲まれ、連行される二人。 興夜は能力が無いのでは無く、想像した「聖遺物/神器」を複製する能力の持ち主であることが判明する。公の場で能力を使用すること・ヒーロー免許のない人間がヴィランを倒すことは法律違反であるため、興夜は危うく逮捕されかける。そこにリッパーが現れて口八丁で興夜を助ける。警察署から出た興夜に、リッパーは笑いかける。 「よう、また会えたな」 「そうだね」 「何にせよ、能力判明おめでとう。これでヒーローになれるな」 「だといいけどね」 その後、行きたい高校にはヒーロー科があり、興夜の能力を聞いた校長の推薦でヒーロー科への入学が決まる。そのヒーロー科にはひつぎも受験することが決まった。 興夜はひつぎと共に学校に通えるのを楽しみにしながら、春を待つ。 だが、ひつぎには誰にも云えない秘密があった。悪の組織オメガと家族ぐるみで付き合いがあり、その頭目に性的虐待を受けているのである。 果たして興夜はヒーローになれるのか。ひつぎは自身の秘密を興夜に打ち明けられるのか。そして、二人の前に姿を現すヒーロー・リッパーとは何者なのか。
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