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プロローグ
先日地球が爆発するという予言を真に受けた馬鹿が、学校で立てこもり事件を起こした。
立てこもりは一時間で終わり、馬鹿はたっぷり生徒指導に怒られたらしい。
馬鹿こと橋木陽明は、俺の隣の席に座る男子だ。橋木はいつも一人でいて、あまりよくわからない本ばかり読んでいる頭のいい馬鹿だった。
見た目がいいので寄ってくる女子に「宇宙からの密偵か!?」などと叫び、それ以来誰一人として近付かなくなった。
橋木と隣の席になったのは一週間ほど前だ。くじの結果を見て思わず「げっ」と言ってしまった俺は、担任に「大丈夫か?」と心配されてしまった。
こくりと頷いてそそくさと席に戻るや否や、横をすれ違った橋木は言ったのだ。
「永井くん、もしや君が宇宙からの密偵かい?」
馬鹿らしい。厨二病も大概にしろ。俺は無視していたのだが、なぜかやつは執拗に構ってきた。曰く、俺は他のやつとは違う匂いがするらしい。
どれだけ話しかけられても、俺は一言もかわさなかった。こうするとみんな、俺に嫌われまいと最後には諦めてくれるのだが、橋木は違った。
あまりにもしつこかったので、危機感を覚える。なぜ突然話しかけられたのかまったく意味が分からなかった。俺は橋木とまともに言葉をかわしたしたことも、目を合わせたことすらないというのに。
苛立ちや不安が募り、俺は席替え三日目にして爆発してしまった。普段なら絶対にしないだろうに、目を見てはっきり言ってやったのだ。
「そうだよ、密偵だよ!」
「やはりそうか! なぜ地球に来たんだい?」
だというのにこの男、目をキラキラ輝かせてこちらを見てくるのだ。その目には純粋な好奇心しか感じられない。
気圧されたことを認めたくなくて、俺は掃き捨てるように言った。
「地球を爆破しに」
これがことの始まりである。
20××年6月6日。橋木は俺をモップで滅多打ちにした。
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