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「歪くんが宇宙からの密偵かぁ。惜しいとこいってるじゃん」
サキは壁にもたれてしゃがみこみ、タバコ片手にそう言った。
目の下に深く刻まれた隈に負けず劣らずのどよりとした目、ギシギシと音が聞こえそうなほど傷んだ金髪、耳に空いたいくつもの穴とピアス。
首から上とは裏腹に、サキの格好はいつも清楚なものだ。今日もまた、真っ白な白いワンピースを着ている。相変わらず絶望的に似合っていない。
「惜しいもんか、まったく違う」
「いいじゃん。宇宙から来た不死者ってことで。欲張りセットじゃんねぇ」
サキは間延びした声でそう言った。
「不死者? 不死者だって? それってもしかして俺のことかよ、冗談じゃない」
サキは乾いた笑いをこぼし、「同じようなもんでしょ」と楽しそうに言った。
それ以上言葉を続けることはせず、徐々に形を成していく俺の左腕をぼんやり眺めている。
方向がおかしくなった右腕は徐々に元の形に戻っていた。抉れた目玉はきちんと黒目が前に向いているし、殴られすぎてへこんだ腹の痣は薄れている。
それでもバキバキに折れた両足は未だ痛み、骨こそなおっていたものの立ち上がることは億劫だ。
そういうたくさんの不具合を見て、それでもなお不死者だというのか。
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