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あの日、俺が宇宙からの密偵だと告白した6月6日。
6限目のチャイムとほぼ同時に「放課後残ってくれたまえ」と橋木は言ってきた。
部活もバイトもしていない俺には時間だけはあった。かと言って気は進まない。
人と関わることをずっと避け続けてきた俺は、業務事項と授業で当てられたとき以外は基本口を閉じているのだ。
あんまりにもしつこいから適当に答えたわけだが、これ以上言葉をかわす気はない。
すぐさま断ったが、橋木は机の前に回り込み、身を乗り出して言った。
「頼む、一度でいい! 今日限りだ!」
割れんばかりの大声が教室に響く。帰り支度をしていた全員の視線が一斉に集中した。
慌てて顔を伏せるも、橋木は構わず大声で話し続ける。
「わかった、わかったから」
早く人の目から離れたくて了承すると、橋木は満足そうに去っていった。
しばらく顔を上げられないでいると、前方から声をかけられる。
ちらりと窺うと、前の男子が「大丈夫か?」と心配そうな顔をしていた。
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