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「あっ……冬馬さ……待って……っ」
「まだ駄目だ。全然足りない。もっとお前を可愛がりたい」
「だってもう3回目……あっ!」
時計の針はもうとっくに日付を変えているというのに、彼が止まる気配が無いことに私は驚きを隠せずにいた。
「言っただろ? 俺の気持ちを嫌って程分からせてやるから覚悟しろって」
「それはそうですけど……や、そこ駄目っ……」
「全然駄目じゃないだろ。そんな可愛い声で啼いて、こっちは俺を離さないって締め付けて煽ってきてるくせに」
「そんなことしてない……っ」
可愛い、愛してる……そう言われながら求められて拒むに拒めなかったら、どんどん彼のペースに持っていかれてしまっている。
「愛してる――この熱を鎮められるのは香里だけなんだ。だから受け止めてくれ」
「その言い方ずるいですっ……んう……っ」
「っはあ……香里……好きだ……! 愛してるっ……く……っ」
愛されてるのは素直に嬉しいし、可愛いと言ってもらえるのも、求められるのも女冥利に尽きるとは思う。
でも、限度もあると思うの。
「悪かった……反省してます」
もう朝方と言っても過言じゃない時間になり、漸く満足した冬馬さんは、ぐったりした私を抱きしめながらしょんぼりした顔を見せた。
「本当に反省してますか?」
「……後悔はしてないけど、反省はしてる」
「私、こんなに何度も抱かれたの初めてですよ……」
本当に、今までの彼が淡白過ぎだったのかな?と疑いたくなった。多分、冬馬さんが普通じゃないんだと思うけど。
「1回や2回で終われるわけないだろ。俺の気持ちはそんなんで終われるようなもんじゃない」
「だとしても、もう少し手加減をしてください」
「……善処する」
冬馬さんの顔には、無理だ、とはっきり書いてある気がする。
「朝になっても動けなければ、俺が車まで運んでやるから心配するな」
「へ? 嫌ですよそんなの。恥ずかし過ぎますっ」
「体調が悪いってことにすれば、別になんとも思われないだろ」
それはそうかもしれないけど、私が居た堪れない。
「その後は、俺の家でマッサージしてやる。月曜日に体が動かなかったら困るしな。あ、風呂も一緒に入るぞ。全部洗ってやる」
嬉々として言う冬馬さんは、本当に楽しそうで嬉しそうで……
誰のせいだと思っているのかと言いたいけど、愛おしそうに見つめながら言われたら、文句なんて言えない。
だって、私の人生でここまで愛された日は他に無いから。
「――お手柔らかにお願いします。あ、夜は寝かせてくださいね」
「……善処する」
困ったように笑いながら近づいてくる気配に目を閉じると、優しいキスが顔中に落とされて、ぎゅうっと抱きしめられた。
その幸せな温もりに包まれて、私は少しの間休息の眠りについた――。
===END===
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