3話

1/2
前へ
/9ページ
次へ

3話

「――お前、何でスーツなんだ」 「だって今日仕事なんじゃ……」 私服の課長を見てポカンとしていると、あからさまに溜息を吐かれた。 「仕事なわけないだろう。プライベートだ」 「え!?」 「何でそんなに驚く? むしろどうして仕事だと思ったんだ」 「だって……」 あんな淡々と言われたら、誰だって仕事だと思うでしょう!? ていうか、プライベートって、何で?抱く気にもならなかった女をどうして誘うの? あれか。あの夜のことは無かったことにしようって念を押すためとか?でもそんなことで予定を空けておけなんて言うかな……しかも休日に態々。 会社ではし辛いかもしれないけど、電話で事足りる話じゃない? 「何をさっきから百面相してるんだ。乗らないのか?」 「え? あ、えっと……一旦スーツ着替えてきたほうが――」 「いや、そのままでいい」 「え? でも」 「ほら、乗れ」 「はい……」 助手席のドアを開けて待たれては乗るしかない。 本当に、課長が何を考えているのか分からない。今日のこれは、一体何なんだろう。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1103人が本棚に入れています
本棚に追加