4話

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4話

私も課長の事が好きなのかも――自覚した瞬間、恥ずかしくて顔が見れなくなった。 だって、課長を好きになるなんて思ってもなかったから。しかも、失恋した直後に。いくら元カレへの気持ちが冷めてきていたとはいえ、あまりにも早過ぎてびっくりだ。 元々課長の事は尊敬していたし憧れてはいた。でもそれは、上司としてのはずだったのに。 「そんな可愛い顔してると、我慢出来なくなる。ここでキスされたくなかったら、さっさとどれがいいか選べ」 「っ……」 耳元で囁かれた言葉に驚いて課長の顔を見ると、本気とも冗談とも取れる顔をしていて、私は慌てて商品に目を向けた。 結局服を買ってもらうことにした私は、デートだから……と大人っぽいワンピースを選んだ。履いているシンプルなパンプスにも合うし、課長の雰囲気にも合っていると思ったから。 そのまま店内で着替えると、課長はこっちが恥ずかしくなるような甘い微笑みで迎えてくれた。 店を出てからは、映画を見た後カフェでランチをして、色んなお店を見て回ったり散歩したり……夜は、課長が予約をしていたというお店で食事を楽しんだ。 「美味しかったか?」 「はい! 料理も美味しくて、お店の雰囲気も良くて気に入りました」 「酒も美味しかっただろ?」 「そうですね。でも、車だから一緒に飲めなかったのが残念です」 食事の後、駐車場まで歩きながら会話をする――こんな何気ない時間が、楽しい。 それに、自然と繋がれた手が嬉しくて、なんだかくすぐったい。 ここ最近の元カレとのデートは会話も減っていたし、やっぱりもう潮時だったんだろうな。 最初はこういう時期もあったのに、何でダメになっちゃったんだろ……私に色気がなくて魅力がないから? じゃあ、課長もいつか私に飽きちゃうのかな……今は私を好きだって言ってくれていても、いつか別の子に魅力を感じるようになっちゃう――? 「何考えてる?」 「え?」 「難しい顔してたぞ」 「……そうですか? そんなことないですよ」 この楽しい空気が変わってしまう気がして笑って誤魔化したけど、課長が誤魔化されてないのは表情から分かった。 「――この後なんだが」 「あ、いつもの場所で降ろしてもらえれば」 「誰が帰すって言った?」 「え?」 「帰すわけないだろ。明日は日曜だし、部屋ももう取ってある。この前我慢した分、今夜はたっぷり可愛がるつもりだからな」 熱の篭った瞳で見つめられながら頬を撫でられて、自分の体が熱くなるのが分かった。 「でもその前に、バーで一緒に飲むか。俺と一緒に飲みたかったっていうお前の望みを叶えてやらないとな。俺も一緒に飲みたかったしいいよな?」 コクンと頷くだけで返事をすると、課長は嬉しそうに笑った。
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