4話

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ホテルのバーに行き、2人でお酒を飲んで楽しい気持ちで部屋に入った。 この前と同じ部屋を態々取ったらしく、見覚えのある絵が飾られている。 「こっち来い」 食事の時にもお酒を飲んでいた私は、アルコールでふわふわとした心地良さに包まれながら、ベッドに腰掛けている課長の元へ誘われるままに歩いていく。 「ここ。膝の上に座って」 「重いですよ?」 「重くない。いいから座れ」 腕を引かれて、そのまま課長の膝の上に座り込むと、「捕まえた」と楽しそうに抱きしめられた。課長ももしかしたら、アルコールで気分が上がってるのかもしれない。 「体暖かいな。酒飲みすぎたか?」 「そうかもしれません」 「今日はちゃんと覚えてろよ?」 「大丈夫です。前程酔ってはないですから」 「そうか。それならいい」 一瞬沈黙が流れた後、課長が顔を覗き込んでくる。そして、自然と唇が塞がれた。 「ん……ふっ……かちょ……」 開いた唇の隙間から、すぐに熱い舌が入り込んでくる。その熱と感触が気持ち良くて、もっともっとと強請るように自分から絡めていく。 「っは……酒の味がするな。積極的だし、可愛い……」 「んっ……」 そういうのが好きなのかな……積極的なら飽きずにいてくれる?そしたら、フラれたりしないのかな…… 「ん……? 何考えてる?」 「……え?」 「また難しい顔してたぞ」 大きな手の平で頬を撫でられて、その心地良さに自分から擦り寄っていく。 「どうした? さっきも様子が変だったが。何かあるならちゃんと言え」 「――課長は、いつまで私に飽きないでいてくれますか?」 「は?」 「元カレには3年で飽きられました。お前に色気がないから、魅力がないからだって浮気されて捨てられたから……怖いんです。課長もいつか、他の子がいいって思うようになるんじゃないかって」 きっと、今度そんなフラれ方したらヤケ酒どころじゃ済まない。それが簡単に想像出来るだけに、怖い。 「……バカだな。俺がお前に飽きる? そんな事、絶対有り得ない」 「そんなの分からないじゃないですか」 「俺を元カレと一緒にするんじゃない。お前は知らないだろうが、俺はずっと前からお前を見てたんだ」 「え?」 思いがけない告白に、課長の顔をまじまじと見てしまう。 「ずっとって……いつから?」 「お前が俺の部下になってからだ」 「それって、私が異動した時からってことですか? でも、もう3年前ですよ?」 「そうだ。3年前から俺はお前を見てた。――最初は、気が利くし仕事が丁寧な子だ、ぐらいにしか思ってなかったんだけどな。いつの間にか好きになってた。まあ、すぐにフラれたけどな」 「フラれたって……」 「お前はその時、もう元カレと付き合ってただろ」 「あ……」 確か、異動するちょっと前ぐらいから付き合い始めたんだっけ。異動したばかりの頃は、覚えることが沢山あって全然余裕無くて……デートもあんまり出来てなかった覚えがある。 「お前に彼氏がいた3年間、それでも俺は飽きずにお前を見てたし、変わらず好きだった。ずっと欲しいと思ってた。つまり」 「つまり……?」 「俺は、お前に飽きたりなんてしないってことだ。3年経とうが5年経とうが、10年経っても変わらない自信あるぞ」 「本当、ですか……?」 「ああ。俺は前の男とは違う。他の女を見たりしないから、俺を信じろ」 真剣な目に見つめられて、自分の中の不安が小さくなっていく気がする。 「俺の気持ちを、もういいっていうぐらい今から分からせてやるから。覚悟しろよ?」 そう言って、課長は膝に座らせていた私をベッドに押し倒した。
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