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ホテルのバーに行き、2人でお酒を飲んで楽しい気持ちで部屋に入った。
この前と同じ部屋を態々取ったらしく、見覚えのある絵が飾られている。
「こっち来い」
食事の時にもお酒を飲んでいた私は、アルコールでふわふわとした心地良さに包まれながら、ベッドに腰掛けている課長の元へ誘われるままに歩いていく。
「ここ。膝の上に座って」
「重いですよ?」
「重くない。いいから座れ」
腕を引かれて、そのまま課長の膝の上に座り込むと、「捕まえた」と楽しそうに抱きしめられた。課長ももしかしたら、アルコールで気分が上がってるのかもしれない。
「体暖かいな。酒飲みすぎたか?」
「そうかもしれません」
「今日はちゃんと覚えてろよ?」
「大丈夫です。前程酔ってはないですから」
「そうか。それならいい」
一瞬沈黙が流れた後、課長が顔を覗き込んでくる。そして、自然と唇が塞がれた。
「ん……ふっ……かちょ……」
開いた唇の隙間から、すぐに熱い舌が入り込んでくる。その熱と感触が気持ち良くて、もっともっとと強請るように自分から絡めていく。
「っは……酒の味がするな。積極的だし、可愛い……」
「んっ……」
そういうのが好きなのかな……積極的なら飽きずにいてくれる?そしたら、フラれたりしないのかな……
「ん……? 何考えてる?」
「……え?」
「また難しい顔してたぞ」
大きな手の平で頬を撫でられて、その心地良さに自分から擦り寄っていく。
「どうした? さっきも様子が変だったが。何かあるならちゃんと言え」
「――課長は、いつまで私に飽きないでいてくれますか?」
「は?」
「元カレには3年で飽きられました。お前に色気がないから、魅力がないからだって浮気されて捨てられたから……怖いんです。課長もいつか、他の子がいいって思うようになるんじゃないかって」
きっと、今度そんなフラれ方したらヤケ酒どころじゃ済まない。それが簡単に想像出来るだけに、怖い。
「……バカだな。俺がお前に飽きる? そんな事、絶対有り得ない」
「そんなの分からないじゃないですか」
「俺を元カレと一緒にするんじゃない。お前は知らないだろうが、俺はずっと前からお前を見てたんだ」
「え?」
思いがけない告白に、課長の顔をまじまじと見てしまう。
「ずっとって……いつから?」
「お前が俺の部下になってからだ」
「それって、私が異動した時からってことですか? でも、もう3年前ですよ?」
「そうだ。3年前から俺はお前を見てた。――最初は、気が利くし仕事が丁寧な子だ、ぐらいにしか思ってなかったんだけどな。いつの間にか好きになってた。まあ、すぐにフラれたけどな」
「フラれたって……」
「お前はその時、もう元カレと付き合ってただろ」
「あ……」
確か、異動するちょっと前ぐらいから付き合い始めたんだっけ。異動したばかりの頃は、覚えることが沢山あって全然余裕無くて……デートもあんまり出来てなかった覚えがある。
「お前に彼氏がいた3年間、それでも俺は飽きずにお前を見てたし、変わらず好きだった。ずっと欲しいと思ってた。つまり」
「つまり……?」
「俺は、お前に飽きたりなんてしないってことだ。3年経とうが5年経とうが、10年経っても変わらない自信あるぞ」
「本当、ですか……?」
「ああ。俺は前の男とは違う。他の女を見たりしないから、俺を信じろ」
真剣な目に見つめられて、自分の中の不安が小さくなっていく気がする。
「俺の気持ちを、もういいっていうぐらい今から分からせてやるから。覚悟しろよ?」
そう言って、課長は膝に座らせていた私をベッドに押し倒した。
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