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「おい! あったぞ! ツリーハウスだ!」
振り返って四人に聞こえるように叫んだ。すぐ近くまで俺を追っていた彰吾は、驚いた様子でその場に立ち尽くしていた。続いて、理央、菜々、瑞希とやってきて全員が口を開いて唖然としていた。
「ほら、やっぱりあるんだよ! 登ろうぜ」
「ちょっと、人のものでしょ!?」
理央が止めようとしたが、無視して木に登った。あらかじめ、ここを登れとでも言うかのように足を引っ掛けるところが作られていた。すいすいと登っていくと、ツリーハウスの床が目の前にまで来た。ぐっと力を入れて、片手で押してみると少し固かったが開いた。開いたところに顔を出してみると、僕の部屋よりも広いスペースが広がっていた。そんなに綺麗じゃないけど、ソファやブランケットなども置いてある。そのまま、身体を持ち上げて中に入った。入り口は部屋の真ん中に作られていて、後ろを振り向くと窓も作られていた。開けられると思って近づいたが、隙間なくガラスがはめられているだけだった。だが、そこから下を見下ろすと四人が見えた。窓をドンドンと叩いたが、誰も気づかなかった。仕方なく、入ってきたところから顔だけ出して呼びかけた。
「中すっごい広いぞ! お前らも登ってこいよ!」
四人はお互いの顔を見合って、どうするか悩んでいるようだった。
「瑞希! お前は来るよな!」
名指しされた瑞希はビクッと肩を震わせたが、渋々と木に足を掛けた。それに続くように、彰吾も登ってきた。女子は久々の木登りで怖気付いているのか、なかなか動かなかった。だが、男子全員がツリーハウスの中に入ったのを見て菜々が先に登り始めた。
やっと全員が揃った。
「どうだ! すごいだろ!」
「本当だ、思ってたより綺麗だね」
「すごい。それにソファとかもあるじゃん」
「奏正、カードゲームとかも置いてあるよ」
「大丈夫か? これ不法侵入ってやつにならない?」
みんなが真っ先に思ったことを口にしている中、俺は一人でドヤ顔をしていた。
「今日からここが俺たちの秘密基地だ!」
叫ぶとみんなこっちを向いてくれたが、誰も嬉しそうな顔をしていない。なんだよ、みんなしてそんな顔して。俺一人が盛り上がっていて、バカみたいじゃないか。
「やっぱり、いつ人が来るかわからない場所で遊べないよ」
菜々がポツリと呟くように言った。
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