本編

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「ヤバい。ここからだと何分ぐらいかかる?」 「そんなに遠くまで来てはないと思うけど、急いだ方が良いと思うよ」  彰吾の家は門限がすごく厳しい。だから、裏山で遊ぶときはいつもアラームを設定して鳴ったら解散している。正直、彰吾だけが帰ってあとは四人で遊んでいても良いけど、彰吾が門限を守れなかったとき、まとめて俺たち五人で叱られるから厄介なのだ。一度、彰吾の父さんが家まで来て俺の母さんに文句を言いに来たこともある。その後、このメンバー全員の家に言った話を次の日の学校で聞いたときは驚いた。それ以来、みんな彰吾の門限を基準に遊んでいる。  急いで一人ずつ、ツリーハウスから出て行った。来た方角に向かって走り出す。思っていたよりも、ランドセルを置いてきた場所からツリーハウスまでそこまで離れていなくて助かった。だけど、ツリーハウスからここまでの時間を考えてアラームを設定していたわけじゃない。門限に間に合わないかもしれないと焦りながら、急いで山を降りる。菜々が走るの遅いから、それに合わせて理央が横に並んでいた。俺たちは、特に二人を待つようなことはしなかった。校門まで来たところで、みんな自分の家に向かって分かれた。 「じゃーなー!」 「また明日」 「バイバーイ」 「門限間に合えよ!」 「もう歩こう……」  俺と家が同じ方向の人はいないから、一人で帰った。家まで歩いて三十分。明日にはツリーハウスで遊べるように、どうするのが一番早いかを考えながら帰っていた。噂をしていた六年生たちに訊くのが一番良い気もするけど、もしそれで俺たちが乗っ取ろうとしていると思われたら困る。やっぱり母さんに聞いてみよう。まだ、大丈夫だと決まったわけじゃないのに、頭の中はあのツリーハウスの中で何をして遊ぼうかでいっぱいだった。
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