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「でさー、上司がさー、僕のことをさー……」
「あーそうなんだ」
「でさー? 僕のやった、頑張った仕事を評価してくれないんだよ!」
「……そうなんだね」
真理はケーキにフォークを突き刺す。もぐもぐと頬張っている。
僕はただ、愚痴っていた。真理がケーキを食べて(きっと)上機嫌なことをいいことに愚痴っていた。
そう、今日は仕事がうまくいかなかったのだ。いつもの優しい上司が何故か厳しくて、褒めてくれなかったのだ。
子供っぽい悩みかもしれない。でも、そんな悩みでも真理は聞いてくれる。上司より真理の方がずっとずっと優しい。
真理はケーキを食べ終えた。喋りながら食べる僕よりずっと早く。
「ごちそうさま。ケーキ、美味しかったよ」
独り言のように呟かれた。にこりともせず、こちらと視線も合わせずに皿を流しに置きにいく真理。
あれ? 機嫌が良くない? いつもなら、ケーキを食べれば上機嫌になるはずなのに。
真理は部屋に戻ってしまった。
ケーキ作戦失敗?
僕は不思議に思いながら一人ケーキを平らげた。あんまりおいしくなかった。
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