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3.調理完了
「警察だ!」
「しまった!」
店長は慌てふためき、カウンターの奥の暖簾をくぐって逃げる。
「待て!」
三人の警察のうち一人がカウンターを飛び越え、暖簾の奥に入っていく。
一人の警察が店の出口を塞ぎ、もう一人が僕のところに来た。
「すみません、大丈夫でしたか?」
「……はい。ビックリしましたが……。でも、どうして警察が?」
「あの男が詐欺をしているからです。方々で詐欺をして逃げ回っていましたが、ようやく見つけました」
そのとき、手錠をはめられた店長が警察と一緒に暖簾の奥から現れた。
「嘘だ! こんなはずじゃなかった! だって俺は、詐欺師の卵を食べたんだぞ!」
「黙って歩け!」
警察が怒鳴りつける。
どうしようもなくなった店長は、「あああああ!」と叫びながら手錠をはめられたままの手を振り回し、発狂し始めた。
「おい! 暴れるな!」
警察が店長を抑え込もうとしたとき、店長の肘が棚に当たって卵が床に落ちた。
「あ」
小さな破裂音と共に卵が割れる。
何の変哲もない、見慣れた黄身と白身が床にぶちまけられ、それを踏んだ店長は足を滑らせて転んでしまった。
「ふっ──」
さっきまですごく賢そうに話していた店長の間抜けっぷりと、そんな店長の食い物にされそうになっていた自分の愚かさに、思わず笑いそうになる。
抑え込まれた店長は、手を引かれて店を出て行った。
「一応あなたにも、事情を聴きたいので署の方に来ていただきます」
ずっと僕の近くにいた警察の一人が僕に言った。
店の前にはパトカーが停まっていて、野次馬も大勢集まっている。
なんだか僕が容疑者になったみたいだ。
僕は署に連行されたが、事情を少し話しただけであっさりと解放された。
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