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 執拗に襲ってくるカラスを、俺はハンマーで応戦していた。 トレーナーの片腕は、ボロボロになり血も滲んでいた。 「クソッ!いてーよ!」 痛みに顔を歪めた時、ノアールが俺の手から滑り落ちた。 カラスは、すかさずノアールに飛び掛かる。 「やめろ〜っ!」 俺が叫んだ瞬間、握っていたハンマーが黒いモヤに包まれた。 「何だ?」 モヤが晴れると、ハンマーは俺の身長ほどに巨大化し、漆黒色に変化していた。 「でかっ!色も変わってるし」 俺は漆黒のハンマーを振り上げ、カラス目掛け振り下ろした。 「ギャッ!!」 カラス達は声を上げると、呆気なくスーッと消えていった。 「大丈夫か?」 俺はノアールに駆け寄り声を掛けた。 ふと見ると、卵にヒビが入っている。 「カラスにやられたのか…」 俺は崩れるように膝を付いた。 「ごめん…守れなかった…」 その時、目の前にニョローンが現れた。 「エクセレントポイント!!」 ニョローンから、紙吹雪が舞い散る。 「エクセレントポイント?」 呆気に取られていると、ノアールの声が聞こえてきた。 「エクセレントポイント!やったぞ!リウ!最高ポイントだ!」 ノアールに目を向けると、卵全体にヒビが入っていた。 「大丈夫なのか?」 「大丈夫だ。孵化が早まったらしい。我は今から孵化する」 宣言直後、卵がはじけ殻が飛び散った。 現れたのは、身長20cmほどの美少女だ。 「ノアール…女子だったのか?男かと思ってた」 「失礼だな。我はれっきとした女だ!」 ノアールは胸を張って断言した。 真っ白な肌に、大きな瞳。 髪は、艶やか黒色でサラサラのロングヘア。 黒くフリルをふんだんに使用した使用した、裾が広がったワンピースを着ている。 いわゆるゴスロリだ。 「こんなに可愛いのに、性格や話し方は変わらないんだな」 「我は変わらぬ。これからもな」 俺はノアールが、無事に孵化してホッとしていた。 「とにかく、無事に孵化して良かったよ。カラスはヤバかったけど」 「リウ…我を守ってくれて感謝する」 「いや、別に…気にしなくてもいい。そう言えばハンマーは、なんで巨大化したんだ?」 ノアールは首を傾げ考えると、頭を振った。 「我にも分からぬ。しかし、リウの心が関係しているように思う」 「俺の心?」 ノアールは頷き言葉を続けた。 「我を助けようとする気持ちが奇跡を起こし、ハンマーに魔力が宿ったのかもしれない」 「そうなのか…」 「その結果、エクセレントポイントを叩き出したのだからな」 そう言えば、ニョローンがエクセレントポイントとか言っていた気がする。 俺は首を傾げながら、ノアールに聞いた。 「エクセレントポイントって何だ?」 「エクセレントポイントは、最高ポイント加算となる。今まで人間で、エクセレントポイントを叩き出した者はいない。リウのおかげで、我は一気に巻き返し最高ポイントを得て、この姿に孵化できた」 「一発逆転したわけか…」 ノアールは頷くと、俺をジッと見つめた。 大きな瞳を一瞬揺らし、そっと目を閉じる。 「リウ…我は行かねばならない…」 「え!もう行くのか?」 「ああ…我らは孵化をすると、すぐに帰らねばならない。そういう決まりだ…リウ、感謝する。元気でな」 「おい!待てよ」 ノアールは、俺の言葉を振り切るようにフッと消えてしまった。  数日後、俺は桜並木を歩いていた。 桜はすっかり散り、葉桜になっている。 「あれから一週間以上経ってるもんな〜」 ノアールの事は、夢じゃないかと思う時もある。 巨大化したハンマーは、気付いたら元の姿に戻っていた。  ピンク色から緑色に変わった桜を見ながら、歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。 「おい!そこの人間!」 聞き覚えのある声だ。 俺は、ゆっくりと振り返る。 「おい!人間!お前の事だ!」 目の前に、ゴスロリノアールが現れた。 「ノアール!帰ったんじゃなかったのか?」 ノアールはフワフワと飛んで来ると、俺の肩に座った。 「リウ!喜べ。戻ってきてやったぞ」 相変わらずの上から目線。 俺は思わず笑った。 「リウ、今からどこに行く?」 「バイトだよ」 「そうか。我も行くぞ。リウの仕事ぶりを見学してやる」 「は?連れて行くわけないじゃん。ノアール見たら、マスター驚くだろ」 「安心しろ。我の姿は、リウ以外見えん」 「へえ〜そうなんだ。それならいっか〜なんて言うわけないだろ!」 俺はノアールを肩に乗せ、言い合いしながらバイト先に向かう。 ノアールが戻って来て、喜んでる自分に気付かないふりをしながら… おわり
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