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 俺は仕方なく、ノアールを温め続けた。 気を使いながら寝てるせいで、寝不足でフラフラだ。 「リウ、いよいよ明日で1週間だ」 ノアールの言葉にハッとする。 やっとこの生活から抜け出せる。 「明日の何時に孵化するんだ?」 「時間は未定だ。朝かもしれないし、夜かもしれない」 「随分、ザックリしてんな〜」 「我らに時間の概念はないからな。しかし…このままだと、魔力も見た目も期待できんな」 ノアールは、諦め気味に溜め息をついた。 「あ〜それは、悪い…」 俺はバツが悪くなり、頭を掻いた。 「まぁ…良い。結果はどうであれ、温めてくれた人間には感謝するように教えられている。リウ…毎晩温めてくれて感謝する。もう一晩だけ頼む」 ノアールがペコリとお辞儀をした。 「いや…気にするな。もう寝るぞ」 俺がベッドに横になり、ノアールが懐に入ろうとした時だった。 部屋の窓から、突然黒い何かが入ってきた。 「部屋の窓は閉まってるぞ!何が入ってきた?」 俺は驚き、それを見た。 「カラスか…?」 一羽のカラスが俺の部屋を飛び回っている。 「あのカラス…目が赤いぞ…」 そのカラスは、どこか異様で禍々しさを感じる。 「リウどうした?」 ノアールが懐から出てきた瞬間、そのカラスがノアール目掛け飛んできた。 「危ない!」 俺はノアールを抱き抱え守った。 カラスは、俺の背中を通過すると天井まで舞い上がり、ホバリングしながらこっちを見ている。 「何だあのカラス…」 「リウ。あのカラスは、我ら種族を脅かすベルル族の刺客だ」 「あのカラスも魔族なのか?」 「そうだ。我の命を狙ってるのかもしれん。こんな所まで来るとは…」 「命狙われてんの?ヤバいじゃん!」 「リウ!気を付けろ!来るぞ!」 カラスが再びノアール目掛け、飛んで来た。 間一髪でノアールを守ると、カラスが俺の頭を突いた。 「イテッ!何すんだよ!」 ノアールが落ちないように抑えながら、片方の手で追い払う。 しかし、カラスは嘴と足の鋭い爪で攻撃してくる。 俺は、ニョローン対策用ハンマーを握ると、めちゃくちゃに振り回した。 その一発が命中し、カラスは床に落ちた。 「やった!」 喜んだのも束の間、窓からもう一羽のカラスが侵入してきた。 床に落ちた奴も復活し飛び回る。 俺はハンマーを握り締め、ジリジリと後退するしかなかった。
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