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ルキオラは、あれからどうなったのだろうと、遠い空に思いを馳せた。
翌朝、日が出ると共に一行は出発した。
途中の村々では、帝国の混乱などとは無縁の、のんびりとした長閑な光景が見えた。
その中を走りながら、ルキオラはこれから帝国がどうなっていくのか、考えてしまった。
オルキヌスによると、リッテンタインは現在国境付近に兵を集結させて、進軍を開始しているらしい。
しかし、村を焼き払ったり、帝国民を無差別に惨殺するようなことはせず。あくまで、先の戦争で奪われた領土を取り返すのみで、進軍を止める計画らしい。
その辺りはもう破壊し尽くされていて、一般の帝国民は住んでいないので、帝都の混乱を考えればすぐに終わると考えているようだ。
あとは和平交渉に移るらしいが、今のファルコンの政権を考えたら、それはずいぶんと先になるだろうと、オルキヌス以外の他の三人も言っていた。
それを聞いてルキオラはホッとした。
このままオルキヌスとともに、帝国を出るつもりだが、心残りがあった。
それは、本当の両親であったペルシア子爵と夫人、そしてお世話になったアーバン伯爵だ。
彼らに別れの言葉も言えずに、この地を離れていくことなり、胸が痛かった。
この混乱状態で、最後に顔を見たいなんてワガママを言うことはできない。
その日も山中で一泊して、その次の日も早朝に出発した。
この頃になると、ルキオラも緊張が解けて、ゆったりした気持ちでみんなと接することができるようになった。
そろそろ村がなくなり、元リッテンタインの領だった場所に入るという頃、小さな村の教会でオルキヌスは馬を止めた。
少し前に休憩したばかりだが、体調でも悪いのかと心配していたら、先に馬を降りたオルキヌスに、軽く抱き上げられて地面に降ろされてしまった。
「ルキオラ様、あちらにいらっしゃるようですよ」
「えっ……」
離れていたゴングルが駆け寄ってきて、ルキオラに声をかけた。
何のことかと思っていたら、教会の中から、杖をついたアーバン伯爵と、ペルシア伯爵、そして伯爵夫人が出てきた。
幻でも見ているのかと、口に手を当てたルキオラは、オルキヌスの方を見てしまった。
「幻じゃない。きっと話したいと思うだろうから、事前に声をかけておいて、ここで待ってもらうように連絡しておいた」
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