2 皇太子の帰還

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 ファルコンはルキオラにとって特別で、立場は違えど幼馴染のような存在で、この生活で心の支えでもあった。  手を繋いで二人で壇上に上がると、それを見たヘルトは不満げな顔で目を逸らした。  神殿長は豊かに蓄えた白い髭を重そうに揺らして、遅れて登場したルキオラに厳しい目を向けた。 「ルキオラ、遅いではないか。殿下の到着を何度も知らせたのに、またお前は……どうせ寝ていたのだろう」 「いえっ、そんな……知らせは先ほど聞いたばかりで……」 「ネブネイル神殿長、ルキオラを責めないでください。ルキオラとは旧知の仲です。私は構いません」  先ほどから礼拝堂内にいる神官達が、ルキオラの遅刻を無礼だとコソコソ話す声が聞こえていた。  ヘルトの仕業かもしれないが、ルキオラへの知らせがわざと止められていたようだ。  神殿長は英雄様に相応しくないルキオラのことを嫌っていた。ルキオラの言葉を信じてくれたことなど一度もない。  ルキオラの言い訳など聞きたくないという顔で睨んできた。  神殿長の隣にいるヘルトが、わずかに微笑んでいるのが見えて、ルキオラは怒りで唇が震えそうになった。  そんな時、ファルコンが間に入って、広い心を見せたので、堂内には感嘆のため息がもれた。  さすがファルコン殿下、皇太子として、下人の愚かな失態を許す広い心を持っていると、集まった者達は口々にそう言ってファルコンを褒め称えた。  自分が悪くはないと主張できる雰囲気ではなくなってしまい、ルキオラは静かに口を閉じた。  この話はきっとすぐに広まるだろう。  ファルコンが人格者だと言われるなら、自分はそれでいいとルキオラは言葉を飲み込んだ。 「本当、殿下はいつも怠け者のルキオラに甘いですね。僕のことも、もう少し可愛がってくださいよ」  今までニヤニヤと笑うだけで黙っていたヘルトがやっと口を開いた。  自然にファルコンの隣に立って、腕に手を絡めて自分の方へ引き寄せた。 「何を言っているんだ。私にとっては二人とも大切な友だ。英雄の子と皇帝の子、立場は違っても、友として二人を大切に思っている」
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