40 女神の微笑み

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 ルキオラが導かれるように手を上げた。  その手の先に光が集まった。  オルキヌスは光に包まれたルキオラの額を見て声を上げた。 「ルキオラ!? 額に……印が!!」  オルキヌスの驚いた声でルキオラは額に手を当てた。  ルキオラの額には印が鮮やかに光っていた。  今まで見た中で一番強く、痺れるような輝きだった。 「祝福の子だ……、本当に選ばれたのはルキオラだったんだ」 「え……」  追い詰められて、消滅の危機が訪れた時、女神は最後の賭けに出る。  オルキヌスは女神が何をしたのか、線が繋がったようにひらめいた。 「ま、まさかぁ!! 女神が騙したというのか!? では、ではヘルトは……」  神殿長が頭を抱えて地面に膝をついた。  その視線の先、倒れているヘルトの額からは印が消えていた。  その光景を見たオルキヌスは、終わりを悟った。 「なるほど、まんまと女神に一杯食わされたな。次の祝福の子で最後という時、女神は力を二つに分けた。力を分けられるギリギリまで待ち、一度ヘルトが全部吸収したと見せかけて、本当はルキオラに全て受け継がせていた」 「ということは……皇帝が食べたヘルトの魂は……」 「皇帝が奪う頃には力をなくしていたのだろう。つまり、ただの人、偽者だったということだな」  オルキヌスがそう言った時、皇帝は大きな黒い塊を吐き出した。  それはまるで心臓のような形をしていて、どくどくと脈打つように揺れた後、液体になってベチャリ地面に広がった。 「ただの人である人間の魂を食べたらどうなるんだ?」 「神は……神は神の力を持たない人を食べてはいけない……。もしただの人の魂を食べたら……、全ての力を失い……消滅する」 「ぐっ……おおおおおっ……」  皇帝はアズの力によって生かされていた。  そのアズの力が黒い煙となって皇帝の体から抜けていく。
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