40 女神の微笑み

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 皇帝の体は腐って黒くなっていき、最後は砂の塊になった。  淀んでいた空気は消えて、暗かった空はいつの間にか青い空に変わっていた。  静寂が辺りを包んで、誰もが風に消えていく、皇帝だったものを見ていた。  オルキヌスは終わったなと言って、剣を鞘に納めた。  静寂を破るように、足音が聞こえてきた。  走ってきたルキオラがオルキヌスに向かって飛びついてきた。 「オルキヌス!」 「ルキオラ!」  オルキヌスはルキオラを受け止めて、高く持ち上げてから、ぎゅっと抱きしめた。  絶望の状況から這い上がって、光の中に立った。  お互い生きていることを確認するように、強く強く抱き合った。  ガヤガヤと声が聞こえてきた。  帝国の貴族達一行が皇帝の死を確かめるように、壊れた礼拝堂の中に入ってきた。 「どこへ行かれるのですか?」  いつの間にか姿を消して、逃げようとしていた神殿長をゴングルが捕まえて、貴族達の前に転がした。  すでに人間ではなく、化け物となっていた皇帝が死んで、帝国はアズの支配から脱した。  落ち着いたかに思えたが、事態はまだ終わっていなかった。  その時、今までずっと立ち尽くしていて、一言も喋らなかった男がついに動いた。  ⬜︎⬜︎⬜︎
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