41 祝福の子

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「かつて、貴方に優しくされて、私は辛く悲しい日々も凍えそうな寂しさも、耐えることができました。たとえ偽りの優しさであっても、助けられた。だから、感謝をしています。ですが、いつまでも他人を利用して、生きていこうとする貴方には失望しました。ヘルトはそんな貴方でもいいと言っていましたが、私は違います。私はもう、偽りの優しさではない。本当に私を愛して包んでくれる優しさを見つけました。その光に向かって、飛び立つことを決めました」 「何だと? まさか……私から離れるのか!?」  ルキオラはファルコンの差し出した手から離れて、後ろに下がった。  そして、今度は別の方向に、しっかりと自分の意思で一歩を踏み出した。  一直線に迷うことなく、その人の胸に飛び込んだ。 「ゴホンッ、まぁ、大丈夫だとは思ったんだが、話が長く感じて、ちょっと不安になってしまったぞ」 「待たせてしまってごめんなさい。私は貴方と生きていきたいです。愛しています。オルキヌス」  飛び込んできたルキオラを抱き上げて、オルキヌスは熱いキスをくれた。  ずっと欲しかったその熱に、体が歓喜の声を上げているのを感じた。 「オルキヌス……貴様、騎士のくせに、主君を裏切るのか!?」 「もともと癪に障る男だったが、こう諦めが悪いと哀れに思えてくるな。悪いが帝国の宝、ルキオラは私が貰い受けた。このまま奪って行かせてもらう」 「何だと!? お前はいったい……」 「申し遅れたな。私は、リッテンタイン王国、国王ブランハム十世の弟で、ザキエル・オルキヌス・リッテンタイン。長年の侵攻に耐えかねて、帝国の弱点を探るために潜り込ませてもらった」 「り、隣国の……!? 貴様、リッテンタインの王弟だと!? ハッ、お前はバカか? よくもこの帝国のど真ん中で、堂々と名乗れたものだ。今すぐ兵達に捕まって、人質にでもなってもらおうか? おい、貴族達、敵国の王族がここにいるんだ! ここはいったんこいつを捕まえるために、手を貸してくれ!」  ファルコンが叫んだが、兵士も貴族達も誰一人動かなかった。  みんな皇帝の支配から逃れて目が覚めたように、冷たい目でファルコンを見ていた。
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