616人が本棚に入れています
本棚に追加
ファルコンに残されたのが、茨の道であることは明らかだった。
ルキオラは胸に手を当てた。
化け物となった皇帝が朽ち果てた時、ルキオラの胸に一つの光が入ってきた。
その温かさを感じた時、それが何だかはすぐに分かった。
女神はそれをどうするか、ルキオラに選択を委ねたらしい。
みんながファルコンの演説に注目している時、ルキオラはその光をそっと元の体に戻していた。
「こんなことになったけど、それでも気持ちは変わらないの? ヘルト」
ルキオラの呼びかけに誰もが一瞬息を呑んで、地面に転がっているヘルトに目を向けた。
すでに事切れていたと思われたヘルトだったが、皇帝が死に、体内に吸収された魂が戻ったことにより、甦ることができた。
ルキオラの問いかけに、動かなかったヘルトは、パッと目を開けてむくりと起き上がった。
それを見たファルコンが、うわぁぁと悲鳴を上げた。
「うん、僕はね、ファルとずっと一緒。一緒に死のうよ。骨になっても、地獄の果てまでずっと一緒」
「ひぃぃぃ!! やめてくれ! 近寄るなっ! 化け物!!」
ファルコンは恐怖に顔を歪めた、剣を抜いてヘルトに向けて振り回した。
すかさず皇宮騎士達が両側からファルコンをおさえて、剣は取り上げられてしまった。
「助けてくれーーー! お願いだ! ルキオラ!!」
ルキオラは目をつぶって首を振った。
ようやく、長い間、囚われていた心が解放されたような気がした。
「行くぞ。彼らも見逃してくれるのは今だけだ。ここを出たら全速力で逃げるからな」
「ええ、もちろん。どこまでもお供します」
いまだファルコンの泣き叫ぶ声が響き渡る中、ルキオラはオルキヌスに手を引かれて、崩れ落ちそうな旧礼拝堂から脱出した。
「あの、逃げる前に、ウルガは大丈夫なのですか? 助けに行かないと」
階段を駆け下りながら、今すぐにでも神殿を出ようとするオルキヌスに声をかけた。
すると後ろから走って追いついてきたゴングルが、大丈夫ですと言って笑った。
「ここら辺一帯、宮殿からの援護で後から来た兵士を掃除したのはウルガですよ。だから、俺達も爆発を聞いて早く駆けつけることができたんです」
「へ?」
「ほら、あそこ」
ゴングルが眩しい笑顔を見せて手を振った。
その視線の先を見たルキオラは、感激して声を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!