41 祝福の子

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「ウルガ!!」  神殿の出口には、馬が数頭用意されていた。  その一つに乗って、こちらに向かって手を振っているのはウルガだった。  その隣には、同じく馬に乗って微笑んでいるジェントの姿が見えた。 「ルキオラ様!!」 「無事だったんだね。よかった!!」  馬を降りて駆け寄ってきたウルガに抱きしめられてしまった。  ウルガは泣いていて、それを見たルキオラも涙を流した。  その横で、オルキヌスが今回だけだぞ、と言いながら頭をかいていた。 「感動の再会はいいが、マクベス公爵がくれた猶予は火の刻までだ。目的があって共闘したが、これからは話が別だ。いつかは和平を結ぶだろうが、今は国の宝を奪う盗人集団だ。さっさと逃げるぞ」 「いいですね、盗人集団。一度なってみたかった夢が叶いました」 「……ウルガ、お前、調子がいいヤツだな」  オルキヌスとウルガのやり取りが新鮮で、ルキオラは目を輝かせながら自称盗人集団の働きぶりをみてしまった。  みんな話しながら颯爽と馬に飛び乗った。  ルキオラはオルキヌスと同じ馬に乗せられた。 「ゴングル、アレは用意できたのか?」 「ええ、はい。国境付近に」 「アレ? 何の話ですか?」  まだ仲間がいるのか、物資でも持っていくつもりなのか、ルキオラは二人の会話を聞いて、興味津々に問いかけたが、オルキヌスはニヤッと笑ってルキオラの頭を撫でた。 「ああ、ちょっとな」 「あっ、私だけ内緒ですか? ずるい、国の宝だと言いながら扱いがひどいです」 「うるさい。騒ぐとキスするぞ」 「うっ、ええ!?」  そんなことを息を吸うみたいに言われてしまって、ルキオラは真っ赤になった。  ゴングルとウルガは気まずそうに顔を伏せて、ジェントはため息をついていた。 「女神よ、祝福の子は俺がいただいた。さぁ、行くぞ!! 野郎ども!」 「うう、うわぁぁ」  空に向かって叫んだオルキヌスが、勢いよく走り出したので、振り落とされないようにルキオラは必死で手綱を握った。  他のみんなもオルキヌスに続いて一斉に走り出した。  土煙を上げながら馬は駆けていき、あっという間に神殿は小さくなった。  生まれてすぐ、英雄様だと連れて来られて、それからずっと過ごした場所。  辛くて悲しい思い出ばかりで、早く出たいと何度も願っていた。
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