41 祝福の子

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 いつかファルコンが自分を選んでくれると願って、窓から外を見ていたルキオラだったが、そんな日々に別れを告げた。  自ら窓を開けて、空に向かって飛び出した。  外には馬に乗ったオルキヌスが待っていて、その胸に飛び込んだ。  英雄の子。  それは悪意によって作り出された、幻の、存在しないものだった。  ルキオラは英雄にはなれなかった子だ。  英雄にはなれなかったが、愛する人や支えてくれる人達を照らす光になりたい。  幸せを運ぶ祝福の子、それが本当なのかも分からないし、実感がない。  それでも、大切な人達を精一杯愛して、愛されて生きていきたい。  どこまでも続く草原、広い大海原、聳え立つ山々、見たこともない景色の中に貴方と…… 「ルキオラ、ありがとう」 「え?」 「俺の胸に飛び込んできてくれてありがとう。もう、離さない」  大きな馬に、オルキヌスと相乗り状態だが、不思議と怖くなかった。  背中に感じる温かさを受けて、ルキオラは胸から幸せが溢れ出していくのを感じていた。  オルキヌスが、耳元で囁いてきた声を聞いて、もっと溢れて泉のようになった。  ルキオラは振り向いて見上げた後、オルキヌスの頬にキスをした。 「私も、奪ってくれてありがとう」  お互いありがとうと言って微笑んだ。  それはこれからもきっと、数えきれないくらい二人の間で交わされる言葉。  始まりも終わりも、この言葉を言って笑いたい。  一つ一つ、大切に積み重ねて  いつも心は一緒に……  この瞬間を忘れたくないと心に刻んで、ルキオラは流れていく景色を見続けた。  ⬜︎エピローグへ続⬜︎
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