612人が本棚に入れています
本棚に追加
ルキオラが穏やかな笑顔を見せると、ウルガもホッとしたような顔で笑った。
「あちらのゴングルとジェントは、王国の元諜報部隊の隊員で、部隊時代のオルキヌス様の部下です。オルキヌス様が抜けてから一緒に隊を抜けて行動するようになりました」
ウルガが残りの二人を紹介してくれると、ゴングルとジェントは軽く頭を下げた。
「もう色々驚いてしまって、他国の高位の貴族だろうと思っていましたけど、まさか、オルキヌスが王族だったなんて……、あっ、ええと、ザキエル王弟殿下」
「やめろって。オルキヌスでいい。敬称を付けないでくれ。それと、そっちの名は連れ戻されてから付けられた名だから、馴染みがないんだ」
オルキヌスの過去は少し聞いていたが、もっと複雑な事情がありそうだった。
泉の近くに座った後、ルキオラの視線に応えるように、オルキヌスは口を開いた。
「俺の父はリッテンタイン王国の第三王子で、母は、モウル国エルミネア公爵家の六女だった。二人は他国で開かれたパーティーで出会い恋に落ちた。しかし、モウル国は帝国の友好国で、リッテンタインとは関係が悪かった。当然、両家とも結婚は反対で二人は引き離された。そこからは前も話した通り、愛の逃避行の末、父の迎えに行くという約束は果たされることなく、エイレンの大火事で母は死んだ」
大火事でたくさんの人の人生が狂わされた。
あの場にいた幼い兄弟が、困難な人生を送ってきたであろうことは想像するに難くなかった。
「火事の後、俺と兄を見つけにきたのは、母を捜索していたモウル国の人間だった。それで、一度はエルミネア家の祖父の元で、兄の治療に専念するが、リッテンタイン王家から使いが来て兄弟で連れ戻された」
「お父様と再会されたのですね? どうして、迎えに来てくれなかったのでしょうか?」
「リッテンタイン王家は、継承位が上から順だが、実力主義で、とにかく兄弟で争わせようとする。父は兄弟争いに巻き込まれて、ずっと幽閉されていた。それが上二人が争って死んだことで、ようやく動けるようになって、俺達を探しに来た。母が亡くなったことを知ると、ショックで翌年には死んでしまったがな。それで、今の王は兄がなったというわけだ」
「悲しいです。争いなどなければ、家族で幸せに暮らせていたはずなのに……」
最初のコメントを投稿しよう!