エピローグ前編  改めまして

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「……もう、終わったことだ。兄と俺も、両親のことについては、乗り越えている」  胸がチクンと痛んだ。  終わったことで、乗り越えたと言ったオルキヌスの顔は、言葉とは違ってまだ悲しみの中にいるように思えた。  ここで国王の話が出たからか、ウルガが食事を配りながらルキオラに話しかけてきた。 「国王陛下である、ルーファス様はとても優しい方です。今は美しい王妃陛下と、二人の王子殿下に恵まれています。弟君であるオルキヌス様のことを、気にかけておられますが、オルキヌス様は国に留まることなく飛び回って傭兵になるなど危ないことばかり。以前から一緒に国を支えて欲しいと言われいるのに、首を縦に振らないのです」 「だから言っているだろう。俺は王弟ってガラじゃない。国の貴族達は隙あらば派閥を作って兄弟争いをさせようとするし、俺がいると兄も迷惑だろう」 「ルーファス様は決してそのようなことは……、いつもオルキヌス様のことを気にかけておられます」 「お前は兄に拾われた恩から、兄に一番忠実な親衛隊員だからな。こんなところにいないで、兄にくっ付いて相談役でもやっていろ」 「わ、私は……!」 「待って、ちょっと二人とも待ってよ」  二人とも同じ人を思っているのは確かだが、立場が違うからか、言い合いを始めてしまったのでルキオラは間に入った。 「ここには大事な人がいない。お兄様の、国王陛下がどう考えているか、それを聞いて話し合わないと。ここで二人で言い争っても答えは出ないよ」  ルキオラの言葉に、オルキヌスもウルガも口を閉じて気まずそうな顔になった。  すると、後ろでその様子を見ていたゴングルが手を叩いて嬉しそうな声を上げた。 「いやぁ、ルキオラ様、歓迎します! 一緒に来てくださって、感謝します! この二人が言い争いを始めると止まらないんですよ。ジェントは絶対入らないし、なぜか俺がいつも最後は殴られて終わるみたいな、謎の終わり方で本当に困っていたんです。あー助かった、ルキオラ様のおかげで頭のこぶの心配がなくなりました」 「頭のこぶって、そんなに……」 「アホっ、人聞きの悪いことを言うな! 掴み合っている時に間に入ってくるのがいけないんだろう!」  拳を突き上げたオルキヌスを見て、ゴングルがひぁっと声を上げて逃げたので、二人のやり取りがおかしくてルキオラは笑ってしまった。
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