612人が本棚に入れています
本棚に追加
「う……嘘、ほ、本当に……?」
「ルキオラ」
三人が手を振って、元気そうにこちらに向かって歩いてくる姿を見たルキオラは、息を呑んだあと、急いで走って向かった。
「みなさん、ここまで大変だったでしょう。来ていただき、ありがとうございます」
ルキオラが近づいて行くと、三人は目を潤ませながら、ルキオラの手を握ってくれた。
「よかった。元気そうだ。皇帝の件で大変だったみたいだな」
「ペルシア子爵……あ、あの……私は……ヘルトではないのですが、ヘルトのフリを……」
「分かっていたわ」
言葉を詰まらせながら、ルキオラが必死に説明しようとすると、子爵夫人が優しく微笑んでルキオラの頭を撫でてくれた。
「貴方がヘルトではないことは分かっていたのよ。ただ指摘して神殿との関係が悪くなると、会わせてはもらえなくなるのと、貴方の立場が悪くなってしまうと考えたら、二人で黙っておこうと考えたの」
「そう、だったのですね……。お二人は……、私のことを分かっていてくださったのですね」
「ええ、一目ですぐに分かったわ。だって、目元はジョーに、口元は私にそっくりだもの。こんなに優しい子に育ってくれて、とても嬉しいわ」
「お……お父様、お母様」
「ルキオラ、私たちの愛しい子」
二人はルキオラを包み込むように抱きしめてくれた。両親の温かさを感じて、堪えきれなくなって、ルキオラはポロポロと涙をこぼした。
側で優しい目をして見ていてくれたアーバン伯爵も、励ますようにルキオラの肩をぽんぽんと叩いた。
「リッテンタインに行くそうだな。ずっと閉じ込められていたんだ。広い世界を見るといい。色々な人に出会って、色々な経験するといい。一つ一つの出会いが君の財産になる」
「あ、あの、これから帝国は混乱すると思います。みなさんも一緒に……」
ルキオラは真剣な目で問いかけたが、三人は微笑んだまま首を振った。
「帝都に残って、マクベス公爵とともに、厳しい目で今後を見定めないといけない。それに、我々は旅に出るには少しばかり遅すぎた。大丈夫だよ、帝国の空の下で、ルキオラの幸せを祈っている」
「ここへの移動はオルキヌス様が手配してくれたのよ。別れを言えなかったら、ルキオラがきっと寂しがるだろうからって。いい人に巡り会えたわね」
「うっ、うう……りがと……ございます」
最初のコメントを投稿しよう!