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「ん?」
「なんて長い道のりなんだ」
「え? 泣いてる!?」
おでこが湿った感覚がしたので、ルキオラが顔を上げると、オルキヌスが苦しそうな顔をしていた。
「あー早く戻りたいー我慢の限界だーー」
「急に里恋しくなったのですか? 話聞きますから、泣き止んでください」
「うぉールキオラーー」
「……何やってるんですか、親分。もうすぐそこですから、早く行きますよ」
ルキオラがハンカチでせっせとオルキヌスの顔を拭いていたら、足が止まってしまったので、後方にいたジェントがすぐ横まで来ていた。
「え、すぐって? もう国境なの?」
「ええ、もう見えていますよ。あの山の向こうからが、リッテンタインの領土です」
ルキオラはジェントが指差した方向を見た。
連なった山々の向こうに、見たこともない世界が広がっている。
リッテンタイン、オルキヌスの故郷であり、お兄さんのいる場所。
「行こう」
ルキオラは新たな世界の始まりに、心を躍らせながら二人に向かって笑った。
オルキヌスとジェントは、ルキオラと同じように笑って頷いた。
新たな出会いはきっと素晴らしいものになる。
山々に向かって吹く風に、その期待を乗せた。
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