戻り道は生きる道 帰る道

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――暗い、痛い、どこだここは。誰もいない、何も聞こえない。 「お父さん」 ――この声、誰だっけ。いや知ってる、思い出せ、大切な人だったはずだ。 「お父さん、お父さん」 ――おとう、さん? 娘、そうだ、和泉の声だ。 「お父さん、私に生きる道を教えてくれてありがとう」 ――よく聞こえない、どこだ和泉。あれ、さっきまでよく見えなかったのに急に道が見えるようになった。これは……家に帰る道だ、良かった。ここを通れば和泉とよく遊んだ公園を通り過ぎて、和泉と一緒にジュースを買ってた自販機を通り過ぎて、あとは木村さんの家を曲がれば。  崖の下に生えた木蓮。カメラを構えて崖ギリギリの所で屈みこむお父さん。私に、背を向けたまま。
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