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遠野凛はどちらかと言えば、クラスで浮いていた。
それは長身だからかとか、切れ長の瞳のせいでとっつきにくいからとかではなく、遠野自身があまり他人と関わろうしないからだった。話しかければちゃんと返すし、普通に愛想笑いも浮かべる。でもそれだけ。自分から誰かに声をかけたり、話題をふったりすることはない。遊びに誘われても断るし、部活にも所属しないし、学園祭の打ち上げにも来ない。本当に最低限の付き合いしかしない。
ルックスがいいから、女子の中では僻む奴も多いらしいが、少なくとも遠野がそれを気にしている様子はない。
孤高という言葉が似合う奴だ。
「よかった。泊まりじゃなくて」
コートを着たまま向かい席に座る遠野は、に同級生には見えなかった。化粧のせいか、少し高そうなコートのせいかはわからない。
「当たり前だろ。明日も学校あるんだから」
「だって、古賀ってよく休むじゃん」
「あれはただのサボり。これとは関係ない」
マックシェイクをすする。
遠野と学校で会話したことはないし、もちろん親しくもない。ただ、学校にいる時よりも空気が柔らかい、気がする。いつもの壁みたいなものを感じない。
「あっそ」
遠野はコートを脱いで隣席にかける。下は見慣れた制服だった。
それからバックからスマホ取り出してアプリで注文を始めた。モバイルオーダーだ。アプリを開くたびに毎回勧められるが、俺は未だに使ったことがない。
「で、なんの呼び出し? 言いふらすつもりならないけど」
「その心配はしてないよ。ただ話したかっただけ。一緒にいた人は誰? 彼女にしては年上過ぎだし」
注文を終えると、スマホの画面を下にして机に置いた。明菜さんが『浮気してる男は、通知を見せないために画面を下向きに置く』と言っていたことを思い出す。
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