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「そっちこそ彼氏じゃないでしょ?」
「彼氏だよ」
遠野の即答に思わず口に含んだシェイクを吹き出しそうになる。
「あはは。冗談に決まってんじゃん。普通信じる?」
遠野がおかしそうに笑う。冗談言うとこなんて初めて見たし、愛想笑い以外の笑いも初めてだった。
「Twitterで知り合ったの。博識で話が上手くてさ、あの人。結構和むんだよねー。古賀は? 出会い系?」
本当にTwitterで会う人いるんだ。すぐにやめてしまったので、どうやってあれで出会うのかあまり想像できない。
「まあ、そう。アプリじゃなくて掲示板だけど」
「掲示板て?」
「アダルト専用のウェブサイトみたいなやつ」
隠す必要もないと思い、スマホでサイトを開いて見せる。遠野はスマホを手に取り「へー、こんなのあるんだ」と呟きながら画面をスクロールしていく。
ウェブサイトの出会い掲示板は、アプリと違い規制が緩い。隠語は使われるが、援交の募集が当然のように投稿される。明菜さんと知り合ったのもこの掲示板だ。
店員がモバイルオーダーのコーヒーが運んでくる。遠野は店員さんが去るのを待ってから、スマホを俺に返した。
「意外。男って需要あるんだ。でもまあ、古賀って童顔だもんね。アラサー受け良さそう」
コーヒーをすすりながら、淡々を感想を述べる。
「肌も綺麗だよね。ほっぺも柔らかそう」
遠野は前のめりになり、コーヒーを持ってない方の指で俺の頬に触れた。頬の一点がひんやりとして、俺は逃げるようにソファーの背もたれにうなだれる。
「ちょっとくらいいいじゃん」
遠野が口をすぼめる。学校よりも表情が豊かだ。というか学校と違い過ぎる。距離感が掴めない。
「古賀ってなんでこんなことしてんの? 欲求不満なの?」
「逆にそれ以外の理由ある?」
それもそっか、と遠野は笑った。
「遠野は? 小遣い稼ぎ?」
嫌味のつもりだったが、遠野は全く意に介さずに首を振る。
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