21人が本棚に入れています
本棚に追加
「違うよ。お金もらってないし。古賀と同じだよ。気持ち良くなりたいだけ。あとは、誰かといたいってのもあるかな」
「へー」
相槌を打ちながらマックシェイクの残りをすする。残りが少なくて、ぞぞぞっと耳障りの悪い音がカップの中で響いた。
「うわー、興味なさげー」
「ないわけじゃないけどさ」
不思議なだけだ。
性格に難があるわけじゃないのに、クラスメイトとは距離を詰めようとしない。けれど、学校外では居場所を求める。矛盾している気もするし、わからないでもない気がする。
毎日顔を合わせる奴らがいる場所は、どうやったって息苦しい。だからって、あんな太ってハゲたおっさんに行くのは極端すぎるとは思う。
「悪い。そろそろ親が仕事終わるから、帰らないと」
どこまで踏み込んでいいかも、どこまで聞いて欲しいのかもわからないから逃げることにした。
「じゃあ、私も」
遠野はコーヒーを、ふーふー、しながら駆け足で飲んでいく。俺は上げた腰を下ろした。
「ゆっくりでいいよ」
遠野は短く「ありがと」と答えて、スピードを下げずあっという間にコーヒーを飲み終えた。
「古賀って明日学校行くの?」
コートを羽織る遠野と歩くのは気恥ずかしかった。しかし遠野は気にしてする様子はなく、背筋を伸ばしたまま堂々と歩く。つられて俺も姿勢を正す。
「たぶん行くけど。なんで?」
「サボるなら一緒にサボろうって思って」
その言葉にどういう意図があるのか、変に勘繰ってしまう。どう答えようか迷っていると。
「てか、サボろうよ」
遠野が俺の前に立つ。まるで、頷かきゃ通さないとでもいうように。
「いいけど」
遠野が嬉しそうに笑う。
学校でも同じように笑えばいいのにと思った。
最初のコメントを投稿しよう!