1話

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「違うよ。お金もらってないし。古賀と同じだよ。気持ち良くなりたいだけ。あとは、誰かといたいってのもあるかな」 「へー」  相槌を打ちながらマックシェイクの残りをすする。残りが少なくて、ぞぞぞっと耳障りの悪い音がカップの中で響いた。 「うわー、興味なさげー」 「ないわけじゃないけどさ」  不思議なだけだ。  性格に難があるわけじゃないのに、クラスメイトとは距離を詰めようとしない。けれど、学校外では居場所を求める。矛盾している気もするし、わからないでもない気がする。  毎日顔を合わせる奴らがいる場所は、どうやったって息苦しい。だからって、あんな太ってハゲたおっさんに行くのは極端すぎるとは思う。 「悪い。そろそろ親が仕事終わるから、帰らないと」  どこまで踏み込んでいいかも、どこまで聞いて欲しいのかもわからないから逃げることにした。 「じゃあ、私も」  遠野はコーヒーを、ふーふー、しながら駆け足で飲んでいく。俺は上げた腰を下ろした。 「ゆっくりでいいよ」  遠野は短く「ありがと」と答えて、スピードを下げずあっという間にコーヒーを飲み終えた。 「古賀って明日学校行くの?」  コートを羽織る遠野と歩くのは気恥ずかしかった。しかし遠野は気にしてする様子はなく、背筋を伸ばしたまま堂々と歩く。つられて俺も姿勢を正す。 「たぶん行くけど。なんで?」 「サボるなら一緒にサボろうって思って」  その言葉にどういう意図があるのか、変に勘繰ってしまう。どう答えようか迷っていると。 「てか、サボろうよ」  遠野が俺の前に立つ。まるで、頷かきゃ通さないとでもいうように。  「いいけど」  遠野が嬉しそうに笑う。  学校でも同じように笑えばいいのにと思った。
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