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思わず手に持ったままだったスマホを耳に当て、『…まさか、』と声を出した瞬間『ついたぜ』と呑気な声が聞こえた。
嫌な予感というのは、まぁ大抵は、…当たる。
急いでインターフォンを見れば、汗を拭いている大星と、その後ろにきっと樹くんであろう男の子が下を向いているのが映っていた。
…なんなの、明日じゃないの…?
よく見れば樹くんの後ろに黒いキャリーケースが置いてある。
もしかして……。
一瞬過った嫌な予感を掻き消すように急いで玄関へ向かいドアを開けた。
「よう」
「……」
「あっちー、汗やべぇ」
「……」
自分のTシャツをパタパタと仰いでいる大星は、至っていつもと変わらず。
ぱちぱちと瞬きをする私に「びびった?サプラーイズ」と子供のような笑顔を見せる。
「……明日、からだよね?」
ここまで来ておいて、答えはノーとわかっているもののそう聞かずにはいられない。
「ん?いやそれがさ、つか中入っていい?」
こちらの都合などこの男にはどうでもいいのだろうか。
遠慮の"え"の字もない返答が返ってきて、なんだかもう逆に諦めがつく。
「……どうぞ」
そういうや否や「お邪魔しまーす」と挨拶だけは一丁前にして中へと進む大星にため息がこぼれ落ちそうだった。
だけどそれは空を切って、大星の影に隠れていた樹くんに視線がいく。
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