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「なぁ、水もらっていい?」
そんな事を思いながらエアコンのスイッチを入れる大星を眺めていれば、樹くんが静かに声を出した。
「っあ、いいよ!遠慮しないで、何でも勝手にしていいから…っ」
7月も後半に差し掛かり22時を過ぎても暑さが残っている。そのうえ、どうやってここまで来たのかは分からないけど少なくとも多少は歩いてきたんだろう。
暑そうにしている2人に冷たい水を出せばよかったな、とそんな事を思いながら樹くんの方を見れば、白い首筋から汗が流れているのが目に入り思わず口を閉ざした。
「あ、俺も」
ただ汗が流れているだけなのに、なんなら大星だっていっぱい汗をかいているのに。
なんだろう、その姿がものすごく、色っぽい。
「お、ビールあんじゃん」
そう感じてしまうのは、きっと樹くんの雰囲気が関係しているんだと思う。
「美優、飲んでいい?」
年の割にすごく落ち着いていると思う。
容姿も、話し方も、雰囲気も、全てが大人びている。
「おい」
「っひゃ、」
そんな樹くんから目が離せずにいると、突然頬に冷たいものが当たって変な声が出た。
「聞いてんのかよ」
「…っびっくりしたぁ」
「これ、飲むぞ?」
そう言って大星が差し出してきたのは、いつも私が飲んでいるビールだ。
「いいけど…、いきなりやめてよ、びっくりするじゃん」
頬に手を当てながら顔を歪ませれば「もっと可愛く驚けねーの?」と言いながら、プシュっと音を立てて目の前でゴクゴクと私のビールを飲みはじめる。
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