ep.00

16/21
前へ
/22ページ
次へ
…なるほど。そういうことか。 気にしていないならそれはそれで良かったんだけど。 「でも床だと体痛くなっちゃうよ?」 いくらカーペットを敷いてるといえ、フローリングの上で寝るのは絶対につらい。 疲れを取るどころか次の日体が痛くなって、余計に疲れてしまう気がする。 「樹くんベット使っていいよ?いつも私が寝てるから、嫌じゃなければなんだけど…」 突然始まったこの共同生活が、苦じゃない、と言えば嘘になる。 だけど次のアパートが見つかるまで、せめて私の家にいる間は、ゆっくりと体を休めてほしい。 そう思って口にした言葉に樹くんの眉が少しだけピクっと動いた。 そして突然立ち上がり私の目の前までくると、「あのさ、」と口を開く。 「まじで気使わなくていいから」 「……え?」 「いきなり押しかけたのは俺の方だし、和泉(いずみ)が遠慮することないから」 淡々と告げられた言葉は、決して冷たい言い方ではなかった。 「ここは和泉の家だろ?」 少しだけ眉を下げて私を見る樹くんは「そんな頑張んなくていいから」と言って私の頭へと手を伸ばす。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加