8人が本棚に入れています
本棚に追加
次の瞬間には彼の大きな手が私の頭を優しく撫でていて、あまりに突然の事で体がビクッと反応してしまった。
「……っ、」
恐る恐る彼の顔を見上げれば、微かに口角を上げ、トロンとした瞳でこちらを見る彼と目が合う。
「……、」
優しくこちらを見つめる彼の雰囲気は、大切にしている恋人に対して向けるような無防備さで。
まるでその相手が自分なのかと勘違いしてしまうほど、頭を撫でる彼の手が、優しかった。
「…うん、ありがとう、」
そんな気持ちを隠すように、樹くんから目を逸らして小さくお礼を言う。
「ん、じゃあおやすみ」
…こういうことをさらっとできるタイプの人なんだろうか。
こんなリラックスしたような表情で、優しい声色で、色気たっぷりの瞳を、誰にでも向けているんだろうか。
今日初めて会話した私にですらそんな姿を見せているんだから、少なくともこんな彼を知っている人は他にも居るんだろうなと想像がつく。
「…お、やすみ」
頭の上に乗っていた手が、静かに離れていく。
目を擦りながら「…ねみ、」と声を溢した樹くんは、先程まで座っていたところへ戻りタオルケットを広げて横になった。
最初のコメントを投稿しよう!